🍳無休で無給のブラック生活「部屋住み」🍳


「730日お世話をさせていただきました」

 -ある大親分の部屋住み

 

◆部屋済み=スーパーブラック生活◆
昔ながらの組織には組事務所や親分の家に住む「部屋住み」と呼ばれる住み込みの組員がいます。

組事務所に住み込むケースは減り、もっぱら親分の家に住みこんだり、事務所近くの「若い衆部屋」という借り上げの社宅のようなところに住むタイプの部屋住みが多いようです。

暖かい布団と3度の食事はつきますが炊事洗濯、運転、掃除などお手伝いさんのような生活をします。ほとんどの場合、給与はなく、手渡しの小遣いやお年玉があったりなかったり。要するに24時間タダ働きの究極のブラック生活です。

◆1日のタイムテーブル◆
一般的な部屋住みはこんな感じです。

午前7時 事務所近くのマンションで起床
シャワーや着替えなどを済ませる

午前8時 事務所到着
事務所前の掃除、「盛り塩」を置く。神棚に供え物をする。泊まり当番の若い衆が作った朝ご飯を食べる。

午前9時 幹部迎え
組長や幹部の家まで車を運転、組長や幹部らを乗せて事務所まで送迎。

午前10時 事務所当番開始
事務所に着いたらおしぼりやお茶を出す。組長や幹部があれこれいうことを行う。朝は組員が入れ替わり立ち替わり事務所に来るので繁忙。電話番も任されます。上位組織の場合は下部組織からモーニングコール的な「定時連絡」が入るので対応が大変。

午前11時 事務所来客
他団体の組長が事務所に。道路まで迎えに行き、事務所の扉を開ける、靴をそろえる、スリッパを用意する、カバンや上着を預かるなどしてお茶を入れ、おしぼりを運ぶ。組長と来客が会話している間はずっと立っている。

正午 昼食
組長や幹部らの昼食を作る。組長や幹部が食べ終えたら自分も素早く食べる。出前や外食に出かけることもある。

午後2時 組長外出
商売の付き合いのある社長に喫茶店で面会するので送迎。別の席で幹部のカバンなどを預かって待つ。商談中は携帯電話を預けられ電話番をする。人がたくさんいる場合は運転席で待機。

午後3時 事務所当番
事務所に戻り雑務と電話番

午後6時 幹部が食事に出かける
送迎。幹部が食事中は店の近くに車を止め運転席に待機。いつ呼ばれるのか分からないので食事やトイレもままならず。

午後9時 幹部が二次会でクラブへ
同上

午後0時 幹部を自宅へ送迎
一緒にラーメンをすする。幹部のおごり。その後、自分も帰宅

プラプラしているように見えますが電話にワンコールで出たり、灰皿を素早く取り替えたり1日中気を張って過ごします。組長や幹部から気分で「水くれや」「新聞どこや」「テレビ6チャンネルにしろや」などと言われたときに素早く対応できないと殴られます。先読みして対応がうまくなると「気が回るようになった」とか「修行ができてきた」と褒められ「オス!ありがとうございます」と頭を下げます。およそまともな社会では考えられない常軌を逸したパワハラを基本とした業務体系です。
ヤクザになるような不良は長年、ニート的な生活をしてきている若者も多く、「朝起きられなくて事務所に来なくなりフェードアウト」する部屋住みが多いそうです。ある組の幹部は「事務所に遅刻しないで出勤したら1万円」というシステムを運用してみましたが、来ない組員は来ませんでした。
「出勤するだけで日給1万円の会社なんてねえぞ。それでこねえってんだからもうわけわかんねえ」とぼやいていました。

◆部屋済みは作法を盗んで元を取る

大ヒット漫画「ヤミ金ウシジマくん」には部屋住みの若い衆が描かれています。商談でホテルのロビーで先方と出会う時、兄貴にボコボコに殴られます。先方を威嚇するための芝居で、若い衆は鼻血を出しながら痛みに耐え、殴ってきた兄貴を尊敬します。部屋済みはブラック生活ですが、親分や幹部を毎日身近に見ながら行儀・作法・そしてシノギのテクニックを学べるというメリットがあります。

ある大親分の部屋住みの組員は親分から大変に好かれ、2年間730日、1日も親分のそばを離れることがありませんでした。その間に特に報酬はありませんでしたが、訪ねてくる兄貴分やほかの団体の親分や商売人、弁護士、警察、様々な人と顔見知りになることができました。そこでは毎回「おう、今俺の部屋済みの〇〇だ。こいつはいい男なんだ」なんて紹介されるので、会う人たちも「この親分がそう言うのなら見込みがあるんだろうな」と一目置くようになります。また、親分や兄貴分の生の会話や交渉術をみて、人間関係のつくり方、勝負のかけ方、交渉術、シノギの進め方を学んだと言います。今は部屋住みを終えていますが、そのときの人脈や経験が生かされ、何十倍ものシノギになって返ってきているといいます。「その時のマイナスをじっと我慢できるかどうかがヤクザの分かれ目ですね」そういって歌舞伎町で肩で風を切って歩いています。

この組員は成功例ですが「部屋住み」は親分次第で天国にも地獄にもなりえ、多くの場合は厳しい「修行」の世界だったと聞きます。



◆部屋済み残酷物語

ある関西の組員は朝から晩まで兄貴や親分にこき使われて死にかけたと話しました。電話に1コールで出なかっただけでパンチを食らい、便所掃除が甘いとキックを食らう。

毎日明け方近くまで親分の飲み屋のハシゴに付き合わされてヘロヘロなのに朝6時に起きて掃除と朝食の準備をしなければなりません。そんな事情はお構いなしの姐さんに犬の散歩をやっておけと言われ、チワワを連れてフラフラ。帰ってくると覚醒剤でアタマがトンでいる兄貴分が「おい今から名古屋に車出せ」。朦朧としながら車の準備をしていると別のアニキが「てめえきょう昼飯担当までに帰って来いよ」などと無理難題をふっかけられ、「〇〇アニキの運転しないといけなくて」と言い訳をすると「おれより〇〇のほうが偉いってのか!?」と鉄拳制裁を受けます。
金銭面でも大変で、兄貴について食事に行ったら「おう、お前ここ払っとけ」と言われたり、たまにお金を手にするや兄貴分に「おい、花札しようぜ」と絡まれスッテンテンにされます。結果、夜中のウチに荷物をまとめて姿を消す組員も多いですが親分は「辛抱のないやつだったな」などとため息をつきます。

たいていのヤクザは長かれ短かれ部屋住みを経験しているので「部屋住み時代はどうでした?」と聞くと目をキラキラさせて楽しい思い出話をする人と、どんより暗い表情になる人がいるのは業界のあるあるのひとつだからでしょう。