暴力団ヤクザの企業舎弟フロント企業とは 舎弟企業を見抜く・経済ヤクザ・警察

 

企業舎弟=フロント企業とは大雑把にいうと「ヤクザと関係のある企業」全般のことです。

映画や小説ではやや大げさな経済活動をしているかのように描かれていますがほとんどはたいしたことはありません。

■ヤクザの経済活動はなぜ悪なのか■

昔はヤクザが山田組の山田土建、田中一家の田中不動産などと名乗り仕事をしていました。

「正業」を主張するものの、なにかにつけて契約や取引にヤクザの暴力・恐怖を持ち込みます。

具体的に言えば相場100円のものを1000円で買えと迫ったり、不要に事業の下請けに法外な値段で参入させるように迫ったりして、断ると事業を妨害するなどをします。具体的な脅しをしなくても、相手に「ウチはおっかない会社だぞ」ということをチラつかせています。

地上げや会社整理、総会屋活動など表の経済活動への介入が甚だしくなった結果、暴力団の企業活動に対する法整備と取り締まりが強化されました。

ある昭和の親分は

「ヤクザは博打とオンナとテキ屋で社会の隅っこで生きてりゃ良かったのに、調子に乗ってカタギの畑を荒らしたもんだからお上の怒りに触れてしまった。自分で自分の首を絞めたの結果が暴対法だな」

としたり顔で語っていました。

 

現代ではヤクザそのものが事業を続けていくことは難しくなりました。

そこで別の人間を社長や社員を表(フロント)に据えた会社で仕事をするようになりました。表向きは一般人が経営する会社でも業界に「あそこはオレの会社だぞ」と吹き込んでいるのでヤクザの怖さ=暴力を背景とした経済活動を続けています。

■企業舎弟・フロント企業の定義■
警察庁では企業舎弟・フロント企業を「暴力団関係企業」と命名し
①暴力団員が実質的にその経営に関与している企業
②暴力団準構成員若しくは元暴力団員が経営する企業で暴力団に資金提供を行う等暴力団の維持若しくは運営に積極的に協力し若しくは関与するもの
③又は業務の遂行等において積極的に暴力団を利用し、暴力団の維持若しくは運営に協力している企業」

と定義しています。

 

①暴力団員が実質的にその経営に関与している企業

一番しっくりくるフロント企業のイメージではないでしょうか。
裏の実質経営者がヤクザというパターンと、表で自称カタギの経営者が実際はヤクザ・周辺者という2つのパターンがあります。

 

 

「あの会社、裏の社長はヤクザらしいよ」パターン

よくも高級官僚が考えた緻密な法律文で「実質的に」という文言が入っています。
会社の登記簿謄本や役員人事、株式の保有などの明白な証拠にかかわらず、警察や金融庁、財務省などの機関が調査や捜査の結果、「実質的にヤクザ・反社会的勢力が経営している」と認定すれば企業舎弟認定されてしまうということです。

具体的には頻繁にオフィスに出入りしているとか、経営者のはずの人物に命令口調だとか、日常的に「オーナー」とか「社長」と呼ばれているとかいう細かい事実を調べます。

そうした証拠をもとにこの会社は実質的なオーナーがヤクザであるヤクザが業務を支配していると認定されれば企業舎弟=フロント企業と認定され暴力団対策法や暴力団排除条例の網をかけることができます。

 

 

「あの会社の社長はさん、実はヤクザらしいよ」パターン


逆に表向きはカタギを自称している会社の社長やオーナーが実はヤクザ・準構成員などの周辺者であるというパターンです。
ヤクザ組織の名簿に載っていればわかりやすいですが、そうわかりやすくはしていません。

警察は社長の日常生活やカネの動きを捜査してヤクザ・周辺者認定をしています。

具体的には暴力団事務所に日常的に出入りしているとか、正式な組員登録はないもののヤクザの親分や兄貴分と「盃事」をしている(その儀式の際の写真がある・同席者の証言がある)とか、暴力団員を「兄貴」とか「親父」とか「兄弟」などと呼んでいるとかいうことがわかると、その人が反社会的勢力であるという認定を受けて社長がスジもんなら会社もそうだと会社がフロント企業認定されることもあります。

 

それにしても「実質的に」というわずか4文字がすさまじいパワーワードです。

どんななに隠しても、お上の力業で「実質的にヤクザだ!」と認定されてしまえば、それで終わりということです。

ヤクザを取り締まるための法律らしいフレキシブルな運用=どうにでもしていいからヤクザを封じ込めろという力が込められています。

 

 

②暴力団準構成員若しくは元暴力団員が経営する企業で暴力団に資金提供を行う等暴力団の維持若しくは運営に積極的に協力し若しくは関与するもの

ヤクザに上納金を支払ったりヤクザ組織を下支えしている企業ということです。
ここでは企業⇒ヤクザへ貢献という①とは逆の方向になります。

暴力団準構成員若しくは元暴力団員という文言が含まれているのはヤクザの世界が正式な組員をビジネスに使わないようになったからです。

正式な盃事をして、名簿に登載して暴力団と認定されてしまった若い衆は、銀行口座も持てないし、会社のオフィスも借りられない。仕事をさせる際に様々な障害が発生します。

なので一時期からヤクザは準構成員を増やしました。準構成員もまた、警察の地道な捜査で「あなたは準構成員です」と決められるものなのでまたフレキシブルな運用ではあるのですが。

 

元暴力団員に関しては事実上、組員と変わらないにも関わらず、破門状を出して表向きクビにして裏で組のビジネスを行わせる偽装破門者への対策です。
実際は組員同様に組織と密接で取引相手にそれを示していたり、親分に金を運んだりしているにも関わらず表面上は「俺はもうヤクザはやめてるんだ。カタギだ。破門状が出てるだろ?」とうそぶいている人たちです。

⓶に関してはざっくり言えばほぼヤクザな人々を取り締まるための文言です。

 

 

③又は業務の遂行等において積極的に暴力団を利用し、暴力団の維持若しくは運営に協力している企業

これは総じて事件屋と呼ばれる恒常的にヤクザを後ろ盾にして活動する黒い人々の会社の場合もあるし、単発的にヤクザに頼る一般企業の場合もあります。

事件屋というのは債権回収や倒産整理、不動産売買など民事上の取引やトラブルに介入する連中です。往々にしてヤクザを後ろ盾として不当な経済活動を進めていきます。フロント企業というよりヤクザそのものにかなり近いです。

 

一般企業であればヤクザの若い衆を使ってマンションやビルなどを占有する不動産会社工事の分配の際に自分の会社に仕事を卸さないとヤクザを使って嫌がらせをするぞと脅す建設会社夜の街でライバル店との競争にヤクザのチカラを借りる飲食業の会社など様々です。

こういうヤクザを頼る文化を持つ企業がまさにこの文章の通り、
暴力団の維持若しくは運営に協力している
ことにほかなりません。

ヤクザの威力を使って、ライバルを押さえつけて利益を広げようとする怪しからん企業……しかし、これもまたあいまいな解釈なので幅広くしていくと半ばイヤイヤながらみかじめ料を支払っている夜のお店なども範疇になってきます。


「俺だってヤクザとの付き合いなんかやめたいよ」
という人たちは少しかわいそうな気もしますが。



■衝撃のフロント企業リスト■

ある都道府県警の暴力団関係業者リスト=フロント企業リストをみたことがあります。
警察の情報収集部署が作っている企業舎弟・フロント企業リストです。
厳密に法規上のフロント企業(銀行取引を停止させられるとか資産を差し押さえられるとかの威力を持つか)に該当するかは微妙でしたが、こんなことでB関係企業の認定を受けて監視の対象になってしまうのかと驚きました。

リストはこんな感じでした。

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企業名    串カツH
所在地    @@市@@区@@ビル2階
対象組織   四代目B組
関係     血縁(幹部の妻の妹が経営)

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企業名    S建設
所在地    @@市@@区@番 Sビル
対象組織   W一家
関係     社長が組長の中学後輩で継続的交友

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企業名    D運送
所在地    @@市@@区@番
対象組織   八代目H会
関係     社長がH会元幹部(本部長)

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正直、かなり無理がある、すごく怖いという印象がありました。

担当部署の刑事さんは「絶対ヤクザにカネが流れているはずだ」と言っていましたが、妻の妹や幼馴染などに関しては少し考えにくいと思いました。

しかし一方で、こうした親密交際者がヤクザの代わりに携帯電話の契約をしてあげるとか銀行のカードを作ってあげるようなことはしているのを何度も見たことがあるので、そういう意味ではこういう周辺者の会社に目を光らせるのは警察の仕事なのだと思いました。

警察はこうした企業の動きをくまなく調べて不自然なカネの動き(マネーロンダリングやみかじめ料、上納金)がないかに加え通帳や駐車場、住居の身代わり契約などがないかを徹底的に調べています。

 

■取引先は大丈夫ですか?■

フロント企業は伝染していきます。

 

危ない会社だと知らずに取引をしていると、その会社も関係があるのではないかと調査・捜査の対象になっていったりします。

本当にその会社の社長が逮捕されて警察からの参考人聴取を受けて初めてそんな恐ろしい企業だったのかと知る人も少なくありません。

ヤクザと関係のある会社の人間はどんなに隠しても服装、言葉遣いなどを注意深く見ていればどことなく不良の香りがします。

いつもはにこやかに話しているのに、ちょっとしたトラブルが起きた時に急に瞳孔が開いたような特有の目をしたり、声のトーンが低くなったり。

自分と話すときは普通なのに電話で仲間内と話すときにガラの悪い言葉遣いをしたり。

反社会的な雰囲気を感じたら、地元の警察や暴力団追放センターに相談してみた方がよいかもしれません。