🎬映画「アウトレイジ最終章」🎬

知人のVシネマ俳優が出演しているため、封切と同時に見てまいりました。いろいろと思うところはありますが、一緒に観た友人はとても面白かったと喜んでいました。純粋なアクション映画として素直な気持ちでみればよいのだと思いますが、やはりヤクザのリアリティ、冷たさ、狂気を押し出している映画なのでもう少しだけ現代のヤクザや警察の実態を加味して描いてほしいと感じました。

◆あらすじ(ネタバレなしです)◆

今回は話の中心が関西の巨大組織、花菱会内部の権力闘争です。1・2作目同様、ヤクザ同士の裏切りに次ぐ裏切りが続き、誰が出し抜くのか、誰が生き残るのか最後までわからないパワーゲームが最大の見所です。

◆世紀の大抗争事件◆

銃撃戦に関しては有名なガンエフェクトの巨匠がついていてハリウッド映画にも負けない迫力でした。北野作品の醍醐味である激しい銃撃の応酬は今作がMAXだと思うので、最大の見どころだと思います。
とはいえ、全作品を通じてあまりに多くの人が無造作・不必要に殺されすぎてここは日本かな?という気持ちになります。市街地やホテルで素顔のままのヤクザが銃を乱射するというほとんどテロな状況にもかかわらず、誰一人警察に検挙されず、警察も「なんだかなあ」くらいの困り具合で物語が進んでいくのはさすがに強い違和感を覚えました。



◆もう少しヤクザや警察にリアリティを◆
アウトレイジシリーズはやっぱり現代ヤクザの冷たい手触りを感じたいという映画で、そうなればディティールに目がいかざるを得ませんが、残念ながら、全3作を通してあまり気配りされていないというか、ほとんど無視されていると思います。

ヤクザの基礎知識

今回の「最終章」でも子分と舎弟の違い、直参と執行部の違い、若頭の役割や人事など基礎的な部分の事実誤認が著しいと感じます。役職の上下関係だけで年長者に暴言を吐くという長幼の序を重んじるヤクザ社会ではありえない場面もありました。本部(事務所)と本家(組長の住居)の区別もついていないし、きれいなオフィスビルに入居する組事務所は不自然でした。日本の大組織の事務所は文化的な側面と法律上組集合物件に新設できないという問題があり90パーセント以上が自社ビルです。

警察組織の基礎知識

一番気になったのは参考人を釈放するとか勾留するとかと話していたシーンでした。任意の参考人と逮捕された容疑者の区別くらいはWikipediaでも読んでつけてほしいです。また刑事が突然、上層部の圧力で捜査二課に異動させられますが、警察官の人事は国から発令日が定められているため、明日からとか来週からとかいう異動はあり得ません。そもそも上位部局が刑事部と組織犯罪対策部は違うので本来、人事異動はありませんし、刑花形部署の捜査二課が左遷先というのも不自然です。4課の聞き込みや取り調べに警察署の地域警察官(制服)が参加していたり、正直、ちょっといい加減すぎます。

◆社会を見せてほしかった◆

仁義なき戦い以来、珍しく久しぶりに幅広く一般の人も見るヤクザ映画で、今後の任侠映画の試金石になると思います。映像や音楽、ファッションもカッコイイし、本当に名作だと思います。しかし、もう少し、もうちょっとだけ、現実社会に引き寄せてほしかった。ヤクザの本当の気味悪さ、暴力性はシンプルなカネへ意地汚さや銃乱射以外でも描けると思います。この映画は海外でも好評を得ていて、私たちが「ゴッドファーザー」を見てただのギャング物語でなく、その向こうにアメリカという国の美しさや矛盾を見たように、この映画でも日本の隠された冷血さや心の貧しさ、また優しさや思いやりを描く余地があったのではないかと思ってしまいます。

4は彼らの幼少時代とのことで、大いに期待しています!

※キャプチャ画像は全てこちらからの引用です。