「救世主にもなるし悪魔にもなる」
-関西 ブローカー
ここでは消費者金融的なヤミ金ではなく、企業や事業化を相手に比較的大きな融資を行う金融業についての話です。
◆ヤクザ=カネ貸しだらけ◆
いろいろなヤクザが「あそこの親分はカネ貸しだよ」などと悪口を言います。ヤクザなら本来は賭博やシマの用心棒代、トラブル介入などで生きていくのが本分で、体を使わずに金利で暮らすというのは男らしくないことだとされているので、「カネ貸しが偉そうにしやがって」などと言われたりします。
しかし、その人の親分も別の団体からカネ貸し呼ばわりされていたります。ヤクザってほとんど金融業なのか?と思うくらい「カネ貸し」呼ばわりされるヤクザが大量にいます。最初は私も目を白黒させていましたが、本当に金融業をしているわけではなく、要するに非合法に稼いだ金を儲け話に出資しているヤクザがたくさんいるだけだと気づきました。
◆ネタはあるけどカネがない人の救世主◆
世の中にはちょっとした資金さえあればその何倍もの利益を見込めるという人がいます。いかがわしい事業が中心で、普通の金融機関からは融資を見込めません。そこで頼りになるのが違法な裏金をしこたま持っているヤクザです。銀行のような手続きや審査もなく、即日・即金が基本のスーパー金融です。
たとえば関西では一時期、ヤクザが出資するぼったくりのガールズバーが急増しました。あるオーナーは女性を集める人脈と優秀な客引きグループとのつながりがあり出店すれば必ず儲けられるという確信がありました。しかし、そんな不穏な商売に資金援助してくれる人はおらずまず最初の開店資金はヤクザにお願いするしかありませんでした。オーナーは開店資金500万円(法外な金利で返済は700万円)をヤクザから借りて毎月70万円ずつ返済し、10カ月で完済しました。
このケースではオーナーは開店資金を得て事業をすることができ、ヤクザは何もしないで200万円の儲けが出たわけで、まさにWin-Winなわけです。
ほかにも不動産の儲け話、株の仕手戦、詐欺などとりあえずのタネ銭があればもっと大きなカネが引っ張れるという話にはヤクザが出資者になるケースが多くあります。本当に確かな投資だと数日間でボロ儲け。あってよかった893ATMということになります。
◆銀行よりも厳しい審査◆
とはいえ、こうした出資を依頼すると、失敗した場合に逃げられないようにいろいろなものを持ってこいと言われます。
・会社の白紙委任状
・会社の通帳印鑑
・親族の住所が書かれた戸籍謄本
・土地や建物の権利証
・家族や親せきの顔写真
いざとなれば会社の資産や家屋敷を売ったり、親族に土下座をしてでも娘や妹を売ってでも返せということです。短期間の融資の場合、本人や家族の身柄まで人質のように扱われ、事実上軟禁生活を強いられることもあります。
そういう算段をしたうえで「万が一貸付金が焦げ付いても、こいつを徹底的に追い込めば回収できる」とわかれば融資します。もっと多額の融資の場合にはさらに大きな資産を持っているかを調査します。
◆失敗すれば熾烈を極める取り立て◆
ヤクザにとって素人に貸したカネを踏み倒されるなどということは経済的損失とともにメンツの問題にもかかわってくるのであってはならないことです。当然、取り立ては苛烈を極めます。
ヤクザは一般企業と同じく慣例的に五十日(※ごとうび=5,10,15,20,25,30日)に集金を行いますが、ジャンプは許されません。
10万円程度なら普通の人なら電話一本で明日まで待ってくれで済みますが、ヤクザは待ったなしです。もし本当にお金がないときは直接会って泣いて土下座でもしたうえで、さらに法外なペナルティ金利が加算され、元本の何倍もの金をむしられることになります。
ヤクザからカネを借りてうまくいった人と話していると「ヤクザは即日即金の救世主」と言いますが、失敗したて苛烈な取り立てに苦しめられた人は「悪魔に出会った」と話します。