🍷ヤクザのシノギ「いい店があるんですよ」の恐怖

ヤクザといるとかなりの確率で「いい店があるからいきましょう」と言われます。

だいたいは奥さんの店です。雑居ビルのスナックで、ちょっと派手目な奥さんが「すいません。お父さんがいつもお世話になってます」とおしぼりを持って出迎えてくれて、カウンターの中からヤンキー調の娘が「こんにちわー」なんて顔を出したりします。奥さんが切り盛りしている店もあれば、奥さんが雇われているだけの店もあります。

「へー。いいお店ですね」とか「奥さんもお嬢さんも美人ですね」なんてお世辞を言うと、なんとなくボトルを入れなければならない雰囲気に誘導されます。さらに「奥さんやお嬢さんも一杯飲んでください」なんて言わないといけない感じに深まっていき、お会計がやや高い感じになります。

その日で終わりではなくて、たびたび連れて行かれるようになり、ボトルが切れたら補充し、奥さんや娘さんに一杯どうぞというのは当たり前になっていきます。しばらくすると色んな人を会わせてくれるようになりますが、場所は全部、奥さんの店に連れて行かれるようになります。



さらに月日がたつと旦那と一緒でなくてもたびたび1人で顔を出さないといけない感じになり、ちょっと日にちが空くと夫から電話が来て「最近きてくれないらしいじゃねえか。女房も娘も顔を見たがってるから行ってくれよ」なんて言われたりします。行ったら行ったであまり安く飲んで帰るとバツが悪い空気を醸し出されます。気がつくと奥さんの店を舞台とした、極めてソフトな恐喝の無限ループに陥っているのです。

ヤクザはこの手の店を複数持っていて、奥さんではなく知人の店、子分の店などのパターンもあります。いずれにしても飲食代のいくらかがヤクザにバックされていたり、世話になっている店に恩着せがましく客を紹介して貸しを作ろうとしたりというヤクザ独特の目的が垣間見えます。極端な場合になると「食事会」が毎週、関係の店で開かれたりしてみかじめ料的な色合いを見せてきたりもします。ヤクザにとっては「会費」名目で安定したカネの徴収ができます。「ちょっといい店があるんだよ」という場合はほぼ間違いなくヤクザの利益になる店で、通常、プチぼったくり店です。気をつけましょうと言いたいところですが、この誘いを断るのは至難の業です。

とにかくヤクザなんかと飲まないのが一番ですね。