闇金ウシジマくん考察
ヤクザ半グレ金儲けと滑川

小学館スピリッツの大ヒット漫画「闇金ウシジマくん」のヤクザ・反グレを考察してみるスピンオフ的な記事です。基本的には「滑川」氏を中心に考察を進めます。

アウトローの頂点に君臨するヤクザが勝ちか
ヤクザを利用するアウトローが勝ちなのか

この物語では「勝ったのはだれなのか?負けたのは誰なのか?その勝ちは負けではないか?その負けは勝ちではないか?」そんな問いかけが根底にある気がします。

◆東京最強ウシジマくん◆
クレイジーなガクト三兄弟にも引くことなくフルスイング。作品は東京で活動する闇金融業者の丑嶋馨(うしじまかおる)を中心に現代の風俗、ヤクザ、半グレ、詐欺師、AV、事件師、アフィリエイト業界、アパレル業界の闇などを描く物語です。確かにこうした社会はカネを中心に世界が回っているので金貸しを描けば多面的に世界が描けるという着眼点に脱帽です。主人公のウシジマくんは地元の不良が誰もかなわない絶対的な強さを持った人物です。クレイジー系キャラとして登場する鰐戸三兄弟(ガクト)や肉蝮(二クマムシ)相手でも全く動揺せずにガンガンと攻めていきます。

◆無敵のウシジマくんが唯一頭が上がらない存在◆

作中、様々なモンスター的な人物に遭遇しても、一歩もひかないウシジマくんですが、唯一ケツ持ちのヤクザである滑川氏には逆らえません。「カネを持ってこい」と言われたら持っていき、「今から千葉に来い」と言われれば早朝でも車を飛ばす。これはウシジマ氏が不良の世界ではヤクザは絶対であるということを理解しているからです。滑川氏や対するハブ組長がウシジマを「ハンパ者」と言い捨て、ウシジマが敬語を使い続けるには不良社会の鉄の掟があるからです。


◆ヤクザの絶対的な力を借りざるを得ない◆

結局、闇金や賭博、薬物の売買などアウトローな商売は絶対的なヤクザのチカラでバックアップされて初めて成り立つものだということを作者の方はよくわかっていらっしゃいます。ウシジマくんは広い意味で企業舎弟=フロント企業の社長であり、ヤクザを無視してシノギをかけることは絶対にできないのです。
ヤクザが相手のトラブルに発展するとヤクザに頼るしかありません。作中、ヤクザを相手にウシジマくんが藪蛇組の飯匙倩組長(ハブ)を敵に回してしまうことがあります。飯匙倩組長は素人にメンツをつぶされたと言ってウシジマを殺すと息を巻きます。
ウシジマは逃げ回りますが、滑川は「素人がヤクザ殴っちゃダメだろ」とウシジマににじりより、自分たちが解決するから素人は引っ込んでいろと言います。
しかし、思いがけず自体は収束せずにヤクザ同士の抗争事件に発展してしまいます。滑川氏はウシジマという企業舎弟のケツ持ちを名乗る以上、メンツをかけて相手のヤクザとケンカを続けます。結局、滑川はウシジマを守るために子分を撃たれ、そして何より尊敬していた兄貴を殺害されることになります。

企業舎弟や共生者は下手に出るフリをしてヤクザに近づき、致命的なリスク、トラブルの解決をヤクザに押し付けて実利=カネを稼いでいるわけです。滑川が勝ちと考えるか、ウシジマが勝ちと考えるか難しいところです。


◆うなるほどカネがあってもカネが使えない実態◆


滑川氏は新宿の1泊7万円高級ホテル(パークハイアットがモデルのような気がします)で暮らし、毎朝4000円ものモーニングを食べ、子分を連れてキャバクラで豪遊します。子分がプレゼントをよこしてくれますが、結局は高級スーツやライター、葉巻くらいです。まともな資産は手にできずホテルやキャバクラなど「消えモノ」にしか使えないヤクザのリアルな悲哀が伝わってきます。

◆若い衆の理不尽パワハラ生活と兄貴への尊敬と◆
滑川氏は兄貴分の「熊倉」氏に目の前の相手を威嚇するために当て馬的に何度も殴られます。また、終盤、熊倉氏が頭を殴られて脳に障害が残り、言っていることが空中戦になって「走っている車から飛び降りろ!」とかわけのわからないことを言われて無用に殴られます。それでも滑川氏は鼻血を拭いてカネを用意し、兄貴である熊倉氏への感謝と尊敬の念を捨てずに添い遂げ、殺害された後も命日には高級ホテルの風呂で酒を飲み、亡き兄貴に想いを馳せます。私たち一般人からするとただの頭のおかしいパワハラ上司ですが、ヤクザの世界では殴られても「気合を入れてくれた」、滅茶苦茶な仕事をさせられても「勉強させてもらった」に変換され、アニキに対する恨みになりません。ヤクザの疑似家族関係に特有のものです。

◆今は亡き、反グレたちが描いた夢◆

六本木などを中心に活動する独立反グレ闇金グループがあらわれます。そこの代表である「獅子野」氏は作中何度もヤクザを見下して「もうヤクザの時代ではない。俺たち反グレの時代だ」という気概を見せます。しかし、数年後にはやはり滑川氏の配下に入り、ヤクザの傘を借りて活動している姿が描かれています。東京では10年ほど前から「関東連合」「怒羅権」という反グレグループが台頭し、闇金、覚せい剤、オレオレ詐欺やアダルト・ビデオ、夜のお店まで手がけてこの世の春を謳歌しました。しかし、その後ヤクザからの猛烈な追い込みに遭遇しました。当時の幹部のほとんどはヤクザに世話になっているか、そもそも自分もヤクザになっています。ヤクザという存在は結局彼らを食ってしまったのです。

 

ウシジマくんは漫画なので、超絶異常者があらわれたり、すごく簡単に人が殺されたり(しかも大量に)とちょっと浮世離れしていますが、細かい組事務所の描写や、ヤクザの日常生活がリアルに描かれていて面白いです。漫画なのでちょっと現実を飛び越えないと盛り上がらないところもあると思いますが、この冷たいリアリティは素晴らしいと思います。

まもなく終焉に向かうとのこと。
どんな結末が待っているのか楽しみです。