盆暮れ正月
東京・赤坂でみかじめ料を徴収していた暴力団幹部が警視庁に逮捕されました。幹部は店を回って「盆暮れは倍だぞ」と脅して回っていたそうです。
ヤクザのみかじめ料は長年、お盆(8月)と暮れ(12月)・正月(1月)に徴収するシステムになってきました。これは自分たちも親分・上部団体にお金を持っていかなければならないところもあり、カツアゲの連鎖のようなむなしい背景があります。
キャバクラや風俗のように毎月みかじめを支払っている店は盆暮れにいつもより多く(だいたい倍額)支払うことが多いです。毎月支払っていない普通の飲食店や小さめのスナックやガールズバー、ホストクラブでは年末だけ付き合うというところが多く、門松や熊手、干支の置物などの物品をやや割高で買わされています。
ちなみに歌舞伎町で中くらいのホストクラブやガールズバーだと熊手を20万円相場で購入します。50万とか100万円なら悩むところですが、そこまでむちゃくちゃな押し売りではないというところもミソです。
本当はそんなものいらないのだから断ればいいのですが、年に1度だけだし、大した金額でもないし、まあ実際縁起物はどこかで買わないといけないものだしなあ。年末の稼ぎ時にヤクザともめて嫌がらせをされたりしたら売り上げが落ち込んじゃうしなあ…なんて気持ちに負けて払ってしまう経営者も多いようです。
また、「付き合い」をしているお店の多くは長年にわたってこうした物品の購入をしているし、徴収に来るヤクザとも友達付き合いになってしまっているし、たまに飲みに来てくれてちゃんとお金も落としてくれるしで人間関係上断りにくいというケースが多いように感じます。毎日「よう元気かい」なんて笑顔で挨拶されたら断りづらくなりますよね。でも逆に「今年から警察がうるさくて」とか泣き落としすればヤクザもヤクザで情があるから引き下がってくれることも多いと思います。
しかし、こうやって一度でも支払うとツケ込んでくるのがヤクザです。ある大阪の飲食店の経営者はしぶしぶ干支の置物を買ったところ、翌年には「置物は2つが対になるように飾る方が縁起がいいよ」と言われました。以来、毎年干支の置物を2つも買わなくてはいけなくなったそうです。
テキヤ花盛り
正月、年末年始の数日間は日本中の神社やお寺に屋台が並びます。テキ屋さんたちにとって1年で一番の稼ぎ時です。ヤクザの中には「テキヤ系組織」と分類されるものがあり、実際にテキヤオンリーで生計を立てている組員もいます。最近はモロ組員だと神社や寺から排除されてしまうので準構成員的な人が多いです。その人たちが売り上げの何割かを自分の兄貴分のヤクザに直接手渡したり「新農組合」とかよくわからない団体経由で渡したりしています。東京ではかなり厳しくなった印象がありますが、地方では「ヤクザの最後のシノギ」として放置しているケースも多いようです。確かに覚せい剤や賭博などと違って違法性のない仕事ですよね。
テキヤ系組織の中にはかなり組織だったヤクザに変貌を遂げたところも多く、組事務所を持って様々な商売をしています。事実上、テキヤ稼業よりも賭博や覚せい剤などが組織の経済活動の中心になっている団体もありますが、そういうことが好きでないという組員は相変わらずテキヤのまとめ役のようことをしています。
強制忘年会・新年会
ヤクザには街でいろいろな顔見知りができます。
道端のキャッチ、ホスト、キャバクラのボーイ、車の修理屋、土建屋の社長、行きつけの店の料理人、ありとあらゆる知人を年末年始の自分主催の忘年会や新年会に強制参加させる組員が結構います。自分の息がかかっているスナックやキャバクラに呼びつけて「忘年会費」や「新年会費」として割高な金額を徴収します。でもビンゴ大会もあったり、女の子もそれなりについてくれたりして、終わってみれば「まあ、いっか」という気持ちにさせるのもうまいです。ソフト恐喝、やんわりカツアゲとでもいえばいいのでしょうか。
私が見た忘年会では会費は一人3万円でした。20人も呼べば一気に60万円の臨時収入です。ビンゴ大会では5万円当たる人が何人かいてその人は「2万円もうかった」と喜んでいました。そうした諸経費を差し引いても店には何万円か渡せばいいだけで、50万円くらいの実入りにはなります。
それをいくつかのグループで回せば末端の組員にとってはかなり良い収入になります。歌舞伎町のある組員は忘年会で儲かったことに味を占めて新年会も開いて100万円近く儲けましたが、翌年は危険を察知して誰も参加しませんでした。
そして何が悲しいかといえばこの組員もまたその兄貴分や親分の忘年会に強制参加させられてお金を払わされていたことです。カツアゲをされるためにカツアゲ。どうしようもない世界です。
Follow @robou8