暴力団ヤクザのシノギ資金源 賭博
ミカジメ裏カジノが儲かる仕組み

「2重3重でミカジメを取っちまえばいいんですよ。
 他とのトラブルなんか知らねえよ」
―関東の暴力団

 

関西の繁華街近くのマンション。キャバクラ嬢の愛人とゲームをしていたカジノ屋オーナーA(34)の携帯が鳴りました。店は勝手に部下が回していて、ほとんど最近は顔も出していませんでした。

店のバイトの大学生からの電話は緊急事態を意味していました。

「おう、どした!?」
「オーナー!急にわけわからん人らが店にきて暴れてます。お客さんみんな追い出されて、今は店長がどつきまわされてます」
「タタキ(強盗)か?」
「違うと思います。オーナー呼べゆうてます」
「え?ポリ(警察)か?」
「いや、でもないと思います」
「じゃあ誰なんや」
「名乗りませんけど、たぶんヤクザです」

オーナーはコントローラーを放り投げて家を出ました。

オーナーは前の店で強盗にあった時のことを思い出しました。そのときは覆面、目出し帽の集団が金属バットを持って店に押し入り、レジのカネをわしづかみにして逃げていました。
友達の店が警察にやられたときも思い出しました。警察はオーナーの所在もキッチリ確認していて、店を急襲すると同時にオーナーの家にも捜索に入っていました。「オーナー呼んで来い」なんて間の抜けたことは言いませんでした。

店の2重ドアを開けて中に入ると、正座させられた店長が囲まれています。スポーツウェアの集団の中にいたスーツの幹部らしき男がオーナーに近寄ってきて
「お前が経営者かいな?」
「はい。自分がオーナーです」
「なら話が早いわい。ワシは〇〇組のもんや。この店、きょうからワシらが面倒見たるわ。月に20持ってこいや」
「いや、うちは〇〇一家さんと話できてますんで」
「知らんわ。そんなもん」

大規模店ならともかく雑居ビルでやっているこの店にとって毎月20万は大きな痛手です。そもそも〇〇一家にも毎月30万払っているのに、なんで2つのヤクザに払わないといけないんだ。オーナーは怒りを隠しながら、携帯で〇〇一家の担当者(中学校の先輩)に電話をします。こういうときこそケツ持ちの出番や。

「あ、先輩、助けてくださいよ。今うちに〇〇組の人が押しかけてきて”うちに守り(モリ)させろ”って言ってるんですけど」
電話口に出た先輩の後ろはうるさくてパチンコ中であることがわかります。
「ふーん。〇〇組はそこらへんを仕切ってるからなあ」
「いや、うちは〇〇一家がケツモチだって」
「〇〇組はややこしいところやでワシらもモメたくないねん」
確かに最近、〇〇組はここらへんではとにかく乱暴なことで有名でした。先週も路上で警察官を殴ったとかで捕まっていたな。
「え?先輩の守り代、〇〇組に払ってええんですか」
「なめとんか。ワシには別にキッチリ払えよ」
「え?そんな払えませんよ。今来てくださいよ」
「バカヤローてめえの店のもめ事で組同士のケンカなんかになったらアニキやオヤジに迷惑がかかるだろうが」
「えー!?」
ブツリと電話が切れました。
「どないや?〇〇一家はんはなんていうとるんや」
オーナーが何も言えずに黙っていると
「ほな、きまりやな。払わんかったらポリにチクって店つぶしたるからな。月々20が惜しいか店が惜しいか考えたらわかることやろ?」
スーツの幹部はレジから20万円をつかみとると「まいどー」と言って店を後にしました。

消える“博徒”たち

暴力団ヤクザには博徒と呼ばれる組織があります。江戸時代から昭和の時代までは花札やサイコロを使った伝統的な賭場が中心でした。刺青にサラシの組員がツボや花札を使って行っていました。
現在は大阪・西成などの一部で常設されているか、暴力団ヤクザ同士がその日限りで場を設けることが主流です。
現在、賭博場のほとんどはトランプを使ったカジノ店か高レートの闇スロットです。

以前はモロ組員が店の黒服をしていて客の扱いや金の管理などを行っていましたが、摘発されると組ごと捜査を受けてしまうので最近は店の経営者や店長、店員はカタギに任せています。大型店舗は限りなく直営に近いですが、小型の店舗はどちらかというと本当にカタギが主体的に運営していてヤクザは「出店料」をかすめ取っています。

昔のように賭博場=ヤクザの直営であれば上のような話は「賭場荒らし」と呼ばれ組織のメンツをかけて撃退したものですが、現代では「知らんがな」で終わってしまうことも多いです。

カジノ屋

カジノは最初の設備投資が大変なのでまったくの素人が始めることはできません。
カジノ店を出しても目をつぶってくれる不動産業者やビルオーナーの人脈、カジノ台やスロット台など設備の準備、イカサマ防止の防犯カメラの設置、ディーラー、店長、店員の確保などが幅広く必要です。
結果、カジノ屋と呼ばれる人種がこうしたもろもろを行うことになります。カジノ屋は表だって店のオーナーや店長を兼ねたりすることも多く、警察が踏み込んできたときの「逮捕要員」だったりもします。

 

暴力団ヤクザは

こうした店を出す際に、地元の暴力団ヤクザには挨拶をして売り上げのいくらかをみかじめ料として支払わなければなりません。そもそも店の立ち上げから暴力団が関わっていることがほとんどなので事実上直営がほとんどなのですが、表向きは分断されています。
暴力団は「うちが面倒見ている店」「モリ(守り)をしている店」などという表現を使います。何かあったときに組直営と指摘されないように、複雑な関係性を標榜しています。

 

たかられまくるカジノ屋

カジノ屋は2重にみかじめ料を迫られることがあります。すなわち自分の店を管理、出資し、「ケツ持ち」しているヤクザと店を構えた場所を縄張り=シマとする組織に払うということです。関東のように明確にシマがあり、最初から「〇〇一家の店」という風に決まっていれば正式に2重払いを行います。
関西のようにシマが決まっておらず群雄割拠だと急に知らない組織が営業中に乗り込んできて「誰に断って商売してるンや」となります。普通は「面倒を見ている」組織が出てきて、「うちの店じゃい」とケンカを買ってくれるのですが相手が強いとみるや「うちは知らねえよ。自分で解決しな」と逃げてしまうことも。
関西にはいくつか「カジノ荒し」でかなりの資金を集めている組織があります。
カジノ屋もやっていることが違法なだけに店で暴れられたり、居座られたりしても警察に助けを求めることもできないのでただひたすらに搾り取られているところもあるようです。

 

 

結局、オーナーは毎月50万円をヤクザに払い続けることになりました。盆や暮れにはちょっと多くしろと言われ、なんだかんだで年間700万円近くの出費になっています。それでも月に100万円近くのアガリがあるので商売を続けています。

違法に稼ぐというのはそういうことです。