暴力団ヤクザのビジネス交渉術 時間
2時間早めに動いて有利に進める

ヤクザに学ぶ・・・
というタイトルはさすがに抵抗がありましたので。

暴力団、ヤクザはいつも誰かと交渉・駆け引きをしています。抗争事件や商売事のぶつかり合いなどまさに掛け合い・場面の時だけでなく日常の些細なことでも常に自分が有利になるように物事をすすめようとします。
くだらないかもしれませんが、私たち一般のビジネスシーンでも活用できる部分があるのでご紹介したいと思います。

 

AVプロダクションの社長Kは西新宿のホテルの喫茶店で午後から大阪の組織の幹部Tと面会する予定でした。TはKの会社のケツモチをしています。いつもは東京にいるTの部下とばかりやりとりをしていてTに会うのは半年ぶりでした。

Kは別口でやっていた投資話でAV業界の仲間とトラブルになっていました。未公開の仮想通貨を買っておけば、公開したら10倍になるというネタでした。Kは先方に1000万円投資しましたが、1年たっても1円も返ってきません。その解決をTにお願いするためにTと会うのでした。
絶対に遅刻してはいけないと思い、待ち合わせ時間の30分前にはホテルの喫茶店につきました。どこの席がいいかと見渡していると一番奥の半個室のような一番良い席にすでにTと若い衆たちが座っていました。
若い衆はKに気がつくとすぐに走ってきて
「オヤジ、もう待ってますんで」と小走りに席に案内してきます。
Kも若い衆について小走りに席に駆け寄ります。少し息が上がってTに挨拶すると自然と「お待たせして申し訳ありません」と言ってしまいました。
するとすかさずTは「気にしないでくれよ。でも、コーヒー飲みすぎてしもうたわ」と明るく返してきました。Kはまた頭を下げました。
待ち合わせ時間より30分も前についたのに、Kは遅刻したような雰囲気を作られてしまいました。
Tは注文を取りに来た従業員と長年の知り合いのように親しげに話しています。実は従業員も関西の同じ県の出身で話が弾んだということでした。Kがいつも使っている店にも関わらずまるでTの店に呼ばれたようなアウェイ感です。


コーヒーが届くと
「遠慮せずに熱いうちに飲んでや。わしはもう待っとる間に飲み飽きたわ」
Tはちょくちょく「お前遅いぞ」「待ってたんだぞ」というアピールをしてきます。
本題の投資話のトラブルの解決に話が進みました。
東京の部下と話していたときは1000万円を回収してもらい、取り分は半分半分(トリハン)で500万円ずつということでした。
Tは開口一番「ナナサンやなあ」と言いました。
1000万円回収したらTに700万、Kに300万ということでした。Kの驚いた表情を見たTは
「わしらが出張ってトリハンは業界の常識ではムリやなあ」
Kは話が違うじゃないですかと言いたい気持ちがありましたが、最初からなんとなく先に着いていたTにマウントを取られてしまい言い出せなくなっていました。結局、ナナサンで依頼をすることになりました。

交渉が終わった後、会計をしようとしたらすでに若い衆が支払い済みでした。わずか3000円ほどでしたがまたTに借りを作ったような形になりました。

Tを見送った後、店に戻り従業員にTはいつから店に来ていたか尋ねると、1時間前にはすでに来ていたということでした。
Kは今度何かで会うときは2時間前に来ようと思いました。

 

ヤクザの義理事や会合では信じられないくらい早く現地集合するクセがあります。抗争などが起きているときは若い衆が何時間も前から現場を確認して警備や何あった際の脱出の計画を考えます。
警備上の理由と、遅刻をしたらいけないということはもちろんですが、先方より早く着いて「よう、待ってましたよ」と優位に立とうという発想からです。

デタラメになったゴルフコンペ

組長のボディガードのEたちはゴルフ場の駐車場で親分の到着を待っていました。
時刻は午前5時過ぎ。肌寒いゴルフ場はまだ真っ暗で、駐車場は街頭に照らされています。遠くに見える山のすそ野あたりがうっすら地明るくなり始めていました。

今週は静岡、埼玉、山梨で親分がゴルフをします。
静岡、埼玉は別組織の兄弟分と。仙台は建設会社の社長たちとです。
「また、明日も6時待機ですかね」
「ああ。そうだな」
「3時出発ですか」
「静岡だから早めで、2時出発だな。6時スタンバイってのは5時には現場に着いとけってことだからよ。親分も9時にはくるってよ」
「でもアニキ、コース回るの10時からですよ・・・こんな早くから」
しかたねえだろ、とEはつぶやいてタバコを窓から投げ捨てました。
いつからか、自分が一番先に現場についていて兄弟分や仕事の関係者を迎えるという文化がドを過ぎて進み始めました。親分だけではなく、ボディガードや子分たち同士も早く着かねばならなくなりました。


バブル期のひと頃、ヤクザの親分たちがやたらとゴルフをしまくった時期がありました。いろいろなところから親分が集まり、ゴルフを行うコンペが流行りました。(バブル期は“握る”金額も半端ではなく大きなイベントでした)
そのころは地上げや債券の切り取りをはじめ、ヤクザが介入できる儲け話が多い時期でした。ヤクザは潤っていましたが、同時に仕事上のバッティング、トラブルも多くありました。何かあったときに抗争に発展し警察に乗り込まれたり、ビジネスチャンスがつぶれたりしたのではかなわないと“ゴルフ外交”が流行っていたのです。
にこやかにゴルフコースを巡りながらもそこには「打ちのほうがお前より格上だぞ」という暗黙の駆け引きがありました。
お互い体の大きなボディガードをはべらせたり、高級外車で乗り付けたり、グリーンにヘリコプターで降り立つ組長までいたそうです。
ここでもやはり時間は大事で、午後1時からコースを巡ろうというのにみんな正午には待ち構えているようになりました。そのうち、先回りをして11時に来るところがでると、じゃあうちは10時に行こうとなりました。しまいには3時間も4時間も前に着く親分が出始めて若い衆は早朝からゴルフ場に詰めるようになりました。
あまりに異様な状態になってきたのである偉い親分が「もう意地の張り合いはやめませんか。若い衆が4時起きではかわいそうだ」と取りなして正常な時間になりました。

一般ビジネスでも使える?

ヤクザに学ぶ・・・というのは言いたくありませんが、先方より早く着いて心を落ち着け、「お待ちしていました」と出迎える手法は普通のビジネスシーンでも使えるやり方ではないかと思います。
ヤクザは上下関係、強弱関係が大好きで先方との関係が50対50でもなんとか49対51にしようと努力をします。こういう細かいところで有利・不利を争うので妙なところに気が利くので、悔しいけれど参考になることがあります。
2時間前にとは言いませんが、1時間前くらいに行ってみるのは案外、相手に先制パンチかもしれません。