「俺がネタ喰って誰に迷惑かかるってんだよ?」
―関西の暴力団員T
◆薬物は「超高級継続嗜好品」◆
ドラッグをやる人の多くは「自分で勝手にやってんだから放っておいてくれ」と主張します。しかし、ドラッグは非常に高価で、定期的な購入を続けるものです。親からの土地や資産を受け継いだ人、企業の経営者や超売れっ子芸能人などでないとまともにドラッグの費用は賄えません。結果、犯罪で費用を稼がなければならなくなり、強盗や窃盗などに走る中毒者が増え、社会の治安が悪くなります。
「放っておいてくれ」と主張していたTですが、結局クスリのカネ欲しさに車上荒らしや高級自動車の窃盗を繰り返し、警察に逮捕されました。最後、警察に逮捕されまいと車で逃げたときは時速120キロで市街地を信号無視して走り回り、何台もの車に当て逃げをして、最後はお年寄りの運転する車にモロに衝突し、大けがをさせました。まったくもって「自分の勝手」では済んでいなく、無関係の人たちに多大な迷惑をかけていました。
◆犯罪が先か薬物が先か◆
薬物常習者が社会にかける迷惑というとラリッて人を刺しまくるとか拳銃を撃ちまくるとかいう事件が連想されますが、私の感覚ではそこまで多くないですし、どちらかというと覚せい剤の後遺症のある精神障害のある人による事件が多いような気がします。ほとんどは通り魔的なものは少なく、身内に対する事件がほとんどなのでテレビや新聞では人を殺したり、刃物で切り付けたりしなければ報道されません。
「ポン中1人捕まえれば、泥棒100件防げる」
今、そんな合言葉のもとに全国の警察は刑事部の強行・盗犯担当、組織犯罪対策部の暴力団担当と、生活安全部の薬物取り締まり担当、が連携して捜査をしています。自動車盗、空き巣、強盗などのかなりの部分が薬物常習者で暴力団と接点が強いからです。よく新宿や渋谷、六本木などで不審車両の検査や職務質問が行われていますが、ほとんどは薬物使用者の検挙を目指したものです。薬物使用本件の摘発と同時に窃盗グループの壊滅を狙ったもので。ベテランの刑事さんは「ダッシュボードにシャブがあったらトランクにバールがある」と言っていました。つまり、薬物と窃盗はセットだということです。
一生ドラッグ費用を賄えて、家から一歩も出ないという大金持ちのお坊ちゃんお嬢ちゃんなら勝手にラリってのたれ死ぬのは自由かもしれませんが。
◆もう一つドラッグビジネスを取り締まる大切な理由◆
「大変な仕事、致命的な使命」
-アメリカ麻薬取締局
バカみたいに直訳すれば上のようになりますが、Vital=バイタルには生命にとって欠かすことができない、逆に言えばそこを損なうと死んでしまうという意味があります。ニュアンスとしては「国の命に係わる使命」となり、文字通りアメリカ合衆国政府は国家の生死をかけて麻薬撲滅に取り組んでいます。
アメリカでは薬物で死亡する人や働けなくなる人が数多くいるほか、薬物中毒者による犯罪、マフィアやギャングの抗争など社会的な基盤を揺るがすものとしてドラッグそのものを根絶しなければならないという目標があります。しかし、もう一つの理由としてこのルールを守ってみんなが誠実に生きている世の中の秩序・規範を維持しなければならないということがあります。
ヤクザ、マフィア、北朝鮮…世の「悪」がなぜこぞってドラッグに命を懸けるのか。
こんなデタラメに儲かる商売はないからです。
100円の原価の商品が
1000円で問屋に売られ
10000円で小売店に売られ
100000円で客たちに売られる
しかもすべて非課税で需要はなくならない。
こんな仕事を悪人たちがしないわけがないのです。
成熟した国が、覚せい剤の密売を取り締まる最大の理由は乱用者の増加や治安の悪化を食い止めるためです。
しかし、同じくらい大切な理由としてこんなデタラメな、人の健康や命の崩壊を顧みないビジネスモデルが成り立つ国はまともな国民が育たなくなるということです。
勤勉、努力、誠実、思いやり、そういった私たちが愛すべき、大切にすべき社会の規範、すべてをないがしろにするのがドラッグビジネスなのです。