✋ヤクザを「必要悪」という人々✋

「まあ保険会社みたいなとこあるよね。
 俺の顔つぶしたらミッチリいくよ」
 ―北陸組織幹部

一般のサラリーマンの皆さんは「ヤクザは必要悪」という意味がわからないと思います。しかし世の中にはヤクザを利用することで利益や保証を手にする人たちがいます。

たとえば、こんなときです。

キャバクラ店のオーナーが新規店舗のオープンにあたって、いくつかの建設会社に内装工事の見積もりを出したところ、どこも500万円前後でした。
ちょっと高すぎるなと悩んでいたところ、ケツモチのヤクザAが知り合いの工務店を紹介してくれました。工務店に見積もりをお願いしたところ「Aさんの紹介なので400万円で請け負います」との返事が返ってきました。オーナーはそれならばと工事をお願いしました。
このとき、ヤクザはオーナーに「ちゃんと工事費は払ってやってくれよ」と声をかけ、工務店には「工期を守ってしっかり工事してくれよな」と声をかけます。



双方をとりむすんだ瞬間、この契約にはヤクザが保険会社のような形で入ることになりました。キャバクラオーナーは工事費を踏み倒しせなくなり、工務店も工期を守り丁寧な仕事を心がけます。
なぜこの約束が守られるかと言えば、お互いの契約不履行・約束違反があればヤクザAが「よくも俺の顔をつぶしやがったな」と怒鳴り込んでくるからです。ヤクザにとってはお願いされたことをやれなかったというのは致命傷で特に地方都市で「〇〇組さんの紹介だったのに工事費を踏み倒された」とか「〇〇組さんに紹介された工務店に手抜き工事された」なんて話が広がるのはヤクザの意地的なもののほか今後のビジネスも含めて大ダメージなので回収に走ります。

当然、こうした場合キャバクラオーナーも工務店もいくらかのお礼をヤクザに支払うことになりヤクザは紹介料を手にすることになります。キャバクラオーナーからすれば安くて保証付きの工事ができた、工務店からすれば不渡りのない工事がもらえたというメリットがあります。

車の修理や買い取り、飲食店の酒の卸契約、風俗店の広告契約などいろいろなところでヤクザの「顔」を利用して商取引でメリットを受ける人たちがいます。これだから「ヤクザは必要悪」なんていう言葉が無くならないのです。

 

■弱まる「必要性」■

とはいえ、現在は暴力団排除条例や法律の影響で契約不履行になったり、トラブルになったときにヤクザが本当にチカラになってくれるか怪しいものです。カタギのちょっとしたトラブルで喫茶店に行って、先方に「○○一家だけど?」なんて挨拶したらから刑事が飛んできてそのまま逮捕なんて話は日常茶飯事です。そんなイザコザにしょっちゅう首を突っ込んむわけにはいきません。いざとなったら「オレ、知らねえよ」と逃げるヤクザは多いと思います。また、ヤクザを使おうとしたら先方から「あなたがヤクザを出してくるなら警察に行きますよ」と正論ですごまれてヤクザに頼れないかもしれません。そうなってくるともはやヤクザに頼る意味がない、逆に言うとそこで足元をすくわれることにすらなりかねません。現代社会でヤクザの必要性はどんどんとなくなっていっています。