「こっちは好きで『尽くし』てるねん」
-関西の大親分の姐さん
姐さんの実像
ヤクザの奥さん=姐さん=極妻のイメージがあり、夫に仕える若い衆=子分たちに「アンタらきばっていきや!」などと檄を飛ばしている着物のお姉さんのイメージがあるかもしれませんが、そもそも現代ヤクザの中でそれなりの人数の若い衆を抱え、事務所や本宅を持って「組長」の体裁を整えられている組員はほとんどいません。
〇〇組組長とか〇〇一家総長などといっていても、実際は「一人親方」であることがほとんどです。
ヤクザの姐さんの大部分はただの「ヤクザの妻」でしかありません。そして大部分の人は夫にかわいがられているというよりは夫を養っている、支えています。
「主夫の先駆けはヤクザだ」と言った親分がいましたが、まさにそのとおりです。ヤクザという人種は基本的にはブラブラして好き勝手に暴れては定期的に塀の中に落ちる自由人です。
かなりの割合の人が妻や彼女の稼ぎをアテにしています。
そんな破天荒で無責任な人たちばかりなので並の精神力ではヤクザの妻はつとまらず、離婚する家庭が大半です。奥さんに少しでも合理的な判断をする能力が残っていればヤクザの夫とは別れようと思うはずなのですが。
警察の分類「女依存型」ヤクザ
警察は暴力団員の情報を整理する際に、おおまかにシノギ別のカテゴリーを作っています。
▼正業型
日常的には普通の仕事をしながら組織に所属
▼博徒型
カジノなど違法賭博による手数料が収入
▼密売人型
覚せい剤など薬物の売買、卸しが収入
▼夜の街型
風俗・キャバクラの経営などで収入を得る
▼親依存型
親の資産や年金などを収入にしている
▼女依存型
女性の収入を分け与えてもらっている
ヤクザの中には本当に仕事もシノギもない人も多いです。
そういう人の多くは「女依存型」です。
夜の街型は少し似ていますが、女性たちを働かせてピンハネをするのに対し、女依存型はワンランク下で、そういう女性からさらに金を融通してもらう人たちです。
彼らはまさにヒモ生活をしていて、
「兄貴と飲みに行くから1万貸してくれ」
「組の会費を払うから3万貸してくれ」
みたいに女性を頼っています。
「貸してくれ」とはいうものの、
いつまでたっても返してくれません。
女性を服従させる手口
女性からお金を「借りる」方法は人それぞれのようです。
恐怖政治型
徹底的なDV=暴力や精神的な恐怖で心を支配して服従させている人もいます。
「ソープで体を売って来い」「給料は丸ごと全部俺によこせ」「逃げたらぶっ殺すぞ」みたいな原始的な脅しで女性を手名付けている人もいます。殴った後に抱きしめる上級者もいるようです。見てきた個人的な感覚では、どんな女性にも通じるやり口ではないので、そういうことにハマりやすい女性を見つけてやっているような気がします。
マメ型・メンタリスト型
マメなやさしさや駆け引きで離れられなくしている人もいます。彼らは普通に恋愛マスターです。キャバクラで客の相手に疲れて帰ってきたら、お風呂が沸いていて、足をマッサージしてくれる。だらしないところもあるけど、LINEもマメでやさしいから離れられないー
ある中堅幹部は見た目も全然カッコよくないし、禿げた小柄なオジサンなのですが、女性をものにしまくっていました。コツはただ一つ。「相手に好きと言われるまで待つことだ」とのこと。水商売のきれいな女性は毎日、いろんな男に迫られるているので、自分に興味がないような男に惹かれるのだということでした。そして、相手がたまらなくなって「アンタのことが好きやねん」となれば、そこから始まる恋愛は長続きし、長い目で見れば引っ張れるカネも多いとのこと。うーん。メンタリスト?(笑)
イケメン型
単純に見た目がとても良いという人もいます。ある指定暴力団の若手組員は見た目がめちゃくちゃにイケメンです。ホストのような恰好をして生活しています。親分の前ではヤクザぽいふるまいをしますが、キャバクラ嬢とかの前では子犬のように甘えて、バシバシと落としていきます。個人ホスト状態でただひたすらに女性から貢がれていました。親分も「あいつは稼ぎ頭なんだ」と嬉しそうでした。
シャブ漬け型
よく見かけたのは覚せい剤で縛っているパターンでした。クスリが欲しいから言いなりになるという悲しい関係です。ある組長は若いころはそういう女性を彼女にして、無限に売春をさせ続けていたといいます。夫婦でどっぷりシャブ中の人たちもいましたが、本当に崩壊夫婦という感じでした。だいたい夫婦そろって車上荒らしやひったくり、美人局などをしていて、定期的にどちらか、あるいは夫婦そろって刑務所に入っていました。どちらかが失踪したり、自殺したりということも多く、マッドハウスでした。とはいえこういうカップルはそもそも女性がすでに覚せい剤に手を出している状態で出会うことが多いので、普通にしていてこういうことにはなりません。よく「シャブ漬けにして風呂に沈める」みたいな話がありますが、まったくまっとうに生活している女性がそういう結末になることはありません。
女性を服従させてしまうなんて、ヤクザって怖いなと思うかもしれませんが、女性も常識ハズレの人ばかりです。ほとんどは女性本人もスケバン基質の不良です。ヤクザとと親和性が強い人ばかりです。そもそもそういう人じゃないとまず出会いがないですよね。
普通の生活していてヤクザの妻や彼女になってしまうことはありません。ヤクザも少なからず「こいつはいけるな」と思った女性を狙っています。
普通に大学を出たOLさんなんかには通じない手口でしょう。服装や話し方で「わあ、怖い人だわ」と初対面で逃げられてしまうと思います。
あとは、著しくポヤポヤしていて意志薄弱だったり、「押し」に弱くて寄り切られたというタイプの人も見かけます。
「最初はゴーインでイヤだったんだけど、まあ、いいかなって付き合い始めた」などというタイプです。
この人たちはややメンヘラのカテゴリーに近いのでまた別のような気がします。
彼女たちは自分たちの極道の夫・彼氏と一緒にいる理由について「かっこいいんだもん」「怖いんだもん」「やさしいんだもん」「しつこいんだもん」などと言いますが、少しでも普通の感覚があればヤクザと結婚したり、付き合ったりしないでしょう。
女性の方にも問題があることが大半だと思います。
極妻 姐さんのハードな一生
ヤクザの奥さん=姐さんは水商売の人が多いです。
若い姐さんたちは「修行中」の若い夫のために夜の町で働き、文字通り「カラダを張って」支えます。
そのうち夫が出世して若い衆を持ち、組を構えシノギが軌道に乗って生活が潤い、ある日繁華街の一等地のビルの鍵を渡されて「これまで苦労をかけたな。きょうからここがおまえの店だ」なんて抱きしめてくれる・・・
と、いうのは理想のモデルケースでありますが、私が見てきた限り100人に1人くらいです。
ほとんどのヤクザは常にカネがなく、あればあったで使っちゃい、何かあればすぐに刑務所に入って、生活費も子どもの学費も奥さんに丸投げの人の集まりです。
奥さんは水商売を続けますが、年齢とともに、高級店→中級店→大衆店→スナックと収入が右肩下がりになり、刑務所に面会に通いながら、子供の学費を必死で捻出する人生が続きます。
尽くすという主張
しかし、それでも夫を支える姐さんたちがたくさんいます。
普通の人からみれば、ヤクザの奥さんたちは「たかられている」とか「せびられている」というような状況で、不幸な人生に見えますが、彼女たちは「尽くし」ていると主張します。
関西の大親分の姐さんは無期懲役になった夫に面会に行ったら、「俺のことなんか忘れて離婚しろ」と言われましたが、ガンとして離婚せず愛を貫いています。
女手1つで子どもを育てるのは並の苦労ではありませんでした。とてもキレイな人で育ちもよく、どうしてこんな困難な人生を歩まなければならないのかと見ていて痛々しく感じます。
しかし、夫が刑務所で写経をするという時間にあわせて家で写経をして「お父さんと一緒になれる時間」などと言って般若心経のびっしりと書かれた習字紙を抱きしめているのをみると、これはこの人にとっての幸せの形なんだなと思います。
結局、恋愛感情でしかないので惚れた腫れたに正しいとか正しくないということはいえないのかなと思います。ヤクザに惚れるのもダメサラリーマンに惚れるのもホストに貢ぐのも、DV彼氏に依存するのも同じと言えば同じのような。
そして、きょうも日本中で姐さんたちが苦労を背負って極妻道を極めているのです。