👘ヤクザの「任侠」精神👘

「私が極道になったのは
今の親分の強きをくじき弱きを助く
その姿に惚れたからです(真顔)」
-指定暴力団幹部

◆建前ではなく自分はヒーローと信じている◆

ヤクザは「任侠」ということばを頻繁に使います。最初は、「こういう建前のウソをつかないとやっていけないんだな」と思って話を聞いていましたが、自分の親分がいかに「任侠道」を歩んでいるかというような話になってくると熱を帯びてきます。酔っ払って話しているときなど「俺たちみたいなニンゲンが、法律で裁けない悪を成敗して素人さんを助けてるんだぜ」などと話してきます。私の感覚で言うと、この精神はかなり多くのヤクザの間で共有されていて、本気で正義の味方だと勘違いしているようです。

◆実際、助る人もいる◆



昼下がりの喫茶店。
シクシクと泣く女性の横にうつむいたサラリーマンがいます。彼は妻子がありながら女性に手を出しました。女性は度重なる謝罪の呼び出しを無視されたため、とうとうヤクザに頼りました。

女性の横に座ったヤクザがサラリーマンをにらんでいます。「アンタにもてあそばれたこの子がどれだけ傷ついてるのかわかってんのかよ?」ぐうの音も出ない正論で切り出します。「社会人として、いや、男として責任をとりましょう」至極まっとうで反論できません。

サラリーマンはATMで50万円を下ろして戻ってきます。

するとヤクザは「この子の傷ついた心の治療費はたったの50万円ですか?この子はいい子だから黙っているけど、俺は今、人としてアンタのことが許せない。同じ男として恥ずかしい」

サラリーマンは苦悶の表情で立ち上がりもう50万円おろしてきます。

100万円の束をジッと見たヤクザは女性のほうに向きなおり、「なあ〇〇ちゃん。この人もこれだけ誠意を見せてるんだから、もう許してあげなよ。この人の家庭を壊すようなことはしたらだめだよ。離婚なんかになったら何より子どもさんがかわいそうだから」と女性を諭します。女性はうなずくと100万円の束をバッグに入れました。

ヤクザが「お兄さんも女を泣かせちゃいけないよ。今後は奥さんや子供も大事にしましょう」などと偉そうに説教を垂れ、サラリーマンは頭を下げて店を出ました。女性は少しすっきりした顔をしていて、お金を握りしめると新しい世界に向かって歩き始め・・・

◆無償でないことに注目すればわかること◆

http://cdn.tv-osaka.co.jp/onair/detail/2017/06/21/15/00/引用
あるヤクザの親分が「俺たちは現代の水戸黄門だ」といいましたが、根本的に間違っています。水戸黄門が悪代官を成敗し、街の衆を助けたあとに、ただの一度でも「お礼をくださいな」などと言ったことはありません。ウルトラマン、暴れん坊将軍、スーパーマン、世の中のありとあらゆるヒーローはそれを無償で行うからこそヒーローであり、正義であり、任侠なわけです。

先ほどの喫茶店に話を戻します。

事が済むと女性から示談金の半分がヤクザに支払われ、ヤクザは「俺はああいうやつを懲らしめるのが仕事なんだ。また何かあったら力になるよ」などと肩を叩いて店を出ていきます。
このとき、ヤクザは信じがたいことに本当に「きょうはかわいそうな女の子を助けて、悪い男をやっつけた。男の家庭も守ったし、いいことをしたなあ」なんて思っているのです。注目すべきはヤクザは報酬を得ているというところで、誰がどう見てもただの恐喝ですが、なるほど強きをくじいて弱きを助けているという側面もあります。

彼らの仕事の大半が「いいがかり」をつけることでそこに彼らなりの正義を持ち込む余地があり、自分を納得させて、時にその姿に酔いしれているのだと思います。このようなものを彼らは「スジ」と呼んで企業恐喝やみかじめ料などありとあらゆる場面で適応させて来るのです。根っからの悪で自分でも言いがかりだということを認識しているヤクザもいますが、意外と半分以上本気で世の中の警察や法律で解決できないトラブルを解決する必殺仕事人だと思っているヤクザは少なくありません。しかし、それはお金をもらった時点で根本からひっくり返っているのですが、そこには調子よく気づきません。

思い返すと中学や高校なんかで傍若無人な不良のくせに、突然、おとなしめのグループのちょっとしたイジメに正義感ぶって介入してきたり、学級委員会で急にまともなことを言って学級委員長や担任を困らせたりする連中がいませんでしたか?あれが大人になって徒党臆んでいるのがヤクザです。

「俺の言ってることがどこか間違っていますか?スジが通っていると思いませんかねえ」