「“分収”3000円で無税すよ。
そりゃ儲かるなんてもんじゃないすよ」
-若手組員K
◆まさしくアウトロー(無法者)◆
ヤクザは堂々と違法行為=ルール違反をして一切税金を納めないのでカネは儲かりますが、人生で何度か刑務所に行くというマイナス要素があるということです。
サッカーでボールを手で抱えて走り、敵の選手に暴力をふるってゴールにボールを投げ込んで歓喜した直後に退場になるみたいな人生を繰り返します。アタマのいい組員も見つからない、バレないで乗り切ろうとしますが、何せ周りがバカばかりなのがヤクザですからすぐに違法行為に手を染めさせられ、そしてつかまります。ヤクザを10年やっていれば、ほぼ間違いなく逮捕されますし、ほとんどは刑務所に行きます。
◆分収3000円◆
賭場では開催者にテラ銭=手数料・開催料が入ります。10年以上前、若手組員Kは地方都市の中規模の賭博場の現場責任者をしていました。
オイチョカブ(花札の出た目の大小を競うゲームでほぼ運しかない)が中心のきわめてシンプルな賭場でしたが、熱気はすさまじく。
「どっちも!どっちも-!」威勢の良い掛け声とともに超高速で「場」が回転する中で発生するテラ銭は1分間およそ3000円だったそうです。
その賭場を開いた場所は港湾工事の期間作業員が多く、口コミで広がり早勤、日勤、夜勤の3交代制の作業員が来つづけました。
1時間で18万円
細切れに4時間ずつ1日12時間営業
↓
1日の売り上げ
18万円×12時間=200万円
1月の売り上げ
200万円×30日=6000万円
1年間で7億円!
当然、税金は納めないので丸儲け。
※とはいえ毎日やっていたわけではないので実際は5億円ぐらいの儲けだったそうですが、それでもとんでもないことです。
◆ただただ無駄遣いの果てに刑務所へ◆
Kは売上金を毎日少しずつちょろまかして大金を手に入れ、月収は1千万を超えました。とはいえ家を買ったり、銀行に貯金したりするとすぐに警察と税務署がすっとんでくるので、結局友達を呼んで、高い食事をして、キャバクラで浴びるように飲むという普通の人からしたら、信じられないような無駄遣いをしてすごしました。1年あまり贅沢の限りを尽くしました。
うらやましいと思うものですが、2年目に警察の摘発を受け賭博開帳図利で逮捕起訴「全部自分がやった。私が責任者」と主張し懲役2年の実刑判決を受け刑務所に服役しました。
◆ヤクザとカタギお互いが理解できない感覚◆
脳学者の養老孟子先生が「バカの壁」という本を書きました。端的に言うとお互いが全く価値観が違う場合、どうやってもそこには「壁」があり、理解しあうことが難しいという内容でした。
ヤクザは頭を使わずに度胸と非常識を武器に「モロ犯罪」で収益を上げて税金も踏み倒してカネを持っているのです。しかし、それには当然「人生の大切な時間を刑務所で過ごす」という一般人には耐えがたいペナルティを引き受けるわけです。しかし、Kはヤクザをやめません。「月収1千万の時は本当に楽しかった。あれで刑務所2年は安いですよ」と言い切ります(この話は以前、別の詐欺師もしていました。やはり一度すさまじく高い生活水準を経験すると普通の生活に戻れないようです)
とかくヤクザにとって刑務所に入るなんてことは一般人が考えるほど大ごとではないのです。この感覚の違いはどこまでいっても埋められることはなく、まじめに生きているサラリーマンから「ヤクザはなんて無意味で悲しい人生なんだ」と白い目で見られても彼らからすれば「サラリーマンでセコセコ生きる方がよっぽど悲惨だぜ」という感覚で、まさに「バカの壁」なのです。
懲役と引き換えに稼いだお金を下らないお姉ちゃんとの飲み代に使い果たし、家の一つも持っていない。そんな人生が本当にいいと思っているわけはなく強がっているだけのヤクザがほとんどですが。
※最近は暴力団が直に街中の賭博場を経営したり、従業員として働いたりすることは少なくなりました。みかじめ料を取って一般人の「カジノ屋」などと呼ばれるノウハウを持った人たちにやらせているケースが大半です。