「龍が如く」のようなファッションのヤクザはさすがに見なくなりました。昭和のヤクザですね。
「テレビで最近のヤクザの幹部は
一見ヤクザに見えないとかやってたんですが、
そんな人見たことねえけどなあ」
-歌舞伎町組員(ジャージに金ネックレス)
◆リーマンスタイルは都市伝説◆
「現代ヤクザはメガネに七三分け。
服装も地味で一見すると銀行マンみたい」
誰が言い出したのかわかりませんが、テレビや雑誌の影響で割と世間に広がっているように思います。
映画「アウトレイジ最終章」では大卒銀行マンが大組織の幹部に収まり、眼鏡に地味なスーツで一見、気のよいサラリーマンみたいないでたちであらわれます。現実社会でこんな見た目の人がヤクザだったらとても怖いですが、私の見ている限り、基本的にヤクザはヤクザな出で立ちの人がほとんどです。歌舞伎町はそこらじゅうにジャージに角刈りの若い衆がいますし、幹部はスーツでもカバン持ちの舎弟が上下スポーツウェアだったりしてキャッチのお兄さんたちもすぐにヤクザとわかり、道をあけます。
地味なスーツを着ているヤクザもいるかもしれません。しかし、マネキンに着せられていれば地味なスーツでも、真っ黒に焼いた顔に五分刈りの頭で数珠だらけの腕や金の指輪とマッチするとそれはヤクザのスーツになってしまいます。
◆ヤクザはヤクシャ 服は衣装◆
「ヤクザとヤクシャは一文字違い」と言われるとおり、ヤクザは自分自身をセルフプロデュースして生きています。トラブルへの介入や恐喝、組織内で立場を維持するには「この人はちょっと普通の人と違うぞ」「この人なら何とかしてくれるかもしれない」「経済ヤクザだ!儲けさせてくれそうだ」という雰囲気を相手に感じさせる必要があるため、ファッションには気合を入れます。一緒に連れまわす若い衆もオシャレにさせ、「デキル感」を醸し出してきます。
近年のヤクザは真っ青なダブルのスーツとかジャージに金のネックレスみたいな度が過ぎたコミカルな不良ファッションはしなくなりましたが、やはりスーツは太めのストライプ、靴はテカテカの「イタリー製」の革靴やフェラーリやベンツのマークが入ったもの、時計も大きめでダイヤモンドや金の装飾(大体ガラス玉と金メッキですが)があしらわれていたり、一見して高価で個性的なものを好みます。また、最新の携帯電話やタブレットなども持ち歩き、高級なライターちらつかせたりします。
ヤクザのファッションで共通していることは行き過ぎたくらい「清潔」であることです。外に出て活動するときはジャージにしろスーツにしろおろしたてのようなキレイなものを着ていきます。ボロアパートでスウェットの上下を着てサンダル履きで髪もクシャクシャなヤクザですが夕方になるとサウナに入り、髪やヒゲを整えてクリーニングおろしたてのスーツを着て街に出ていけばなんともイケてるヤクザを演じることができます。着ている服はまさに衣装で、昼間の小汚いオヤジとは別人のような姿で夜の街という舞台では映画俳優のような振る舞いを見せます。夜の繁華街で無用に新品みたいなスーツを着ている集団はヤクザかもしれません。
◆野球選手??◆
永遠の定番は長袖のアンダーシャツです。野球選手かウェットスーツみたいな独特の長袖ピチピチアンダーシャツですが、刺青を隠すために着ています。ヤクザは街中や素人に刺青を見せて歩いてはいけないという内部規則みたいなものがあります。任侠映画にあこがれてカッコつけているとかではなくて単純に「こないだおたくの若い衆が刺青放り出してたよ」なんて話になったら叱られるからです。夏なのにTシャツの下にアンダーシャツを着ているのは不自然なのですぐにわかり、「オレはスジモンだぞ」というアピールになっています。