AV業界 基礎システム編
スカウト・プロダクション・メーカー

「女優は野菜と同じですよ」
 ―大手プロダクション社長

業界の話題になるとテレビや新聞は「女性の人権が侵害されている!」とシリアスな社会問題として取り上げ、雑誌やネットは「1日100人を相手にする」などと無用に裏話を書き立てますが、そこまでウラもオモテもない世界です。
性というわかりやすい欲求に対して映像商品を売る。それはスーパーが食品を売ることとあまり変わりません。あまりにいい加減な情報が氾濫しているのでキーボードを打ち始めました。

基本的な仕組み

スカウト会社が女優さんを見つける
⇒ プロダクションが女性と契約
⇒ プロダクションが女性をメーカーに売り込み
⇒ メーカーがプロダクションと契約
⇒ メーカーから依頼を受けた監督が撮影・編集
⇒ 商品をつくる(DVD・デジタル動画)
⇒ 販売店やレンタルショップの店頭に並ぶ/
インターネット配信
⇒ 皆さんのスクリーンへ

女優さん

原材料。
以下は全て一般的な商品でいえば加工や流通部門になります。

スカウト会社
女優さんを探す仕事。すでに風俗店で働いている女性に「もっと稼げるよ」と持ちかけることが主流。ほとんどの女優がデビュー後も風俗勤務と並行。基本的には風俗のスカウトマンとして女性を管理している。
強要・悪質スカウト問題
テレビや新聞で「モデル(歌手、タレントetc)になりませんか」と巧みに誘われると騒ぎ立てていますが、レアケースです。別稿で書きます。

プロダクション
芸能事務所。女優の契約やスケジュールを管理し、出演料の交渉やイベントの諸手続などを行う。トラブルを避けるためにもフリーランスで女優活動はできず、全員がどこかのプロダクションに所属する。女優の知名度によりまちまちで年に2、3回しか出演しない女優は「登録先」くらいの感覚。売れっ子女優になると毎日プロダクションの社員と関わるためファミリー的な仲の良さに。
マネージャーの仕事
ハードな仕事なので、女優の心や生活を支えて、仕事がスムーズに行くように頑張る。メンタルが不安定な女優やワガママ放題のオヒメサマ女優も多いので大変。

メーカー
プロダクションを通じて女優と出演契約をし、DVDの製作、販売を行う会社。映像の編集やDVD製作などモノ作りが中心。DVD販売店やレンタルビデオ店に仕入れの交渉もする。最近はネットでのストリーミングやダウロード販売の方が大きくなり販売店やレンタルショップに頼らず稼げる世界に。
イベント会社になりつつある
インターネット上での月額見放題や無料海賊版の拡散により、映像本体の売り上げより握手会、撮影会、コンサートなどのイベントで稼がなければ売り上げが伸びなくなってきた。

監督
メーカーの依頼を受けて物語を構成し、作品を作る。台本制作、ロケハン、撮影場所(スタジオ・ホテル)の確保、カメラマンの手配も。編集やモザイク処理も行う。大変な仕事だが、撮影や編集、脚本の基礎を学べるので。著名になれば高収入。
総合仕事人
椅子に座ってメガホンを持って「カット!」という仕事ではなく、ADに近い。車の運転、弁当の手配、空調の管理、現場の空気感を盛り上げるなど多岐。自分が出演する人も。

カメラマン・音声・照明
監督の指示に従い、撮影しする。フリーランスが多く、専属でない場合の人も多い。日常的には結婚式やイベントの撮影をしている人もいる。
テクノロジー進化
4Kカメラ、一眼レフ撮影、VRカメラなど技術革新は激しく、素人でもプロみたいな映像が撮れる。監督とバイトが手持ちのデジカメで撮るケースも増えてきた。カメラマンは音声や照明、アングルで勝負が必要。

メイク・衣装
女優さんに好きなようにメイクさせると異常にケバくなったり、逆に淡泊になりすぎたりするので必要です。女優さんに女優気分になってもらい、気分を高めてもらうためという面もあるようです。



ヤクザ

「面倒見てるっていうのはありますが、
 ケツを持って“許可”させてるだけで
 別に何かしてやってるわけではないんですよね」
 ―半グレAV業者と親しい中堅幹部

特殊な業界でそもそも限りなく直営の会社ばかり。新規参入しにくい業界で、一見独立して立ち上がったように見えるメーカーや事務所もほとんどはどこかの傘下に入っていたり、系譜の流れの中にある。そこから上層にカネが流れヤクザにも分流されていく。
ただ、昔のようにモロ本職が関わることがないし、トラブルがあって出てくることはない。大手メーカーやプロダクションの社員や女優さんは本当に接点がないから本気でクリーンだと思っている。
複雑な分業業態事情のスキ
多岐にわたって分業している上に、相場がない業界で不透明なお金が動きがちです。プロダクションやスカウト会社への支払いがなんとなく高すぎても容姿や才能の対価に払われるものなので基準が曖昧です。広告・販売促進部門、コンサル、パッケージ製造、衣装・スタジオレンタル、動画配信サーバー代、HP制作料などの外注部門はもっと不透明です。そういうところがトンネル機関として機能しヤクザにカネが流れています。

女優さんを野菜と呼ぶ人

女優という人間を商品として扱い、いろんな人が転がして利ザヤを稼いでいくシステム。女優さんはていねいに扱われますし、お金も渡されます。しかし、人格や人間としての尊厳がシステム上無視されていることに気がつきます。

ある大手プロダクションの社長が言いました。
「女優は大事に育てて高く販路に載せるだけです。
 野菜と同じですよ。脅すとか手を上げるなんてとんでもない。
 八百屋が商品の野菜を蹴飛ばしたりしないでしょう」

ケツモチをしているヤクザの幹部より、
社長の真っ黒い穴のような目の方が怖いのです。