「歌舞伎町で好き放題しさせてもらえて、
ヤクザがケツモチしてくれてるはずだけど
ボクらは誰なんだかわかりません」
―飲食店キャッチ
◆街角の不良たち◆
忘年会シーズンですね。
「これからオアソビの方は?」
日本中の繁華街で声をかけてくるキャッチのお兄さんたち。夜のお店もあれば普通の飲食店もありますが、みなさん少しヤンチャな気配。かといって極道な雰囲気かというとそれよりは軽く人懐っこい。彼らはどのようにヤクザとかかわっているのでしょうか?
◆歌舞伎町事件◆
数年前、キャッチグループAとキャッチグループBが歌舞伎町でケンカになりました。いつもならお互い舌打ちをして別れるところですが、小競り合いが続いていて、Aからするとここいらでガツンとやらないと縄張りを奪われるという状況でした。怒鳴りあい、胸ぐらつかみ合いの中、Aの現場リーダーが売り言葉に買い言葉で「うちのケツ持ちは〇〇組だぞ!」と怒鳴りました。〇〇組は関西に拠点を置く巨大な指定暴力団で、歌舞伎町でも勢力は強くい団体でした。関東中規模の△△組をケツモチにしているBは一瞬ひるみましたが、同じくリーダーがケツモチの△△組の幹部に助けを求めました。電話を受けた△△組の幹部は「〇〇組なら自分も知り合いがいるから話し合いをしよう」ということになり〇〇組の兄弟分に電話をしました。
△△組
「オタクが面倒見てるAってのがウチがケツ持ってるBとコミあってるんだけどよ」
〇〇組
「A?なんだそりゃ!聞いたことねえな」
△△組
「キャッチの兄ちゃんはオタクの名前出してるぞ」
路上でにらみ合いをしていると〇〇組の若い衆が駆けつけてきました。Aグループの現場リーダーは「こっちです!」と勝ち誇った顔で手を振ると
「てめえか!うちの組の名かたってるのは!?」
Aのリーダーはそのまま若い衆軍団に首ねっこをつかまれて組事務所まで連れていかれてしましました。
〇〇組
「勝手に人の組の名前出してぶっ殺すぞ!」
リーダー
「うちのケツモチは〇〇組さんのはずです」
〇〇組
「ウチはお前のところなんか知らねえよ」
リーダー
「でもそう聞いてたんです…」
〇〇組
「いいからとりあえず社長を呼べ!」
10分後、近くのパチンコで連チャンしていた若社長が、ドル箱を放ったらかして血相を変えて飛んできました。
事務所に入った社長は開口イチバン
社長
「すいません!うちのケツモチは◇◇組なんです」
リーダー
「え?うちって〇〇組さんじゃないんですか?」
社長
「違うよ!誰が言ったんだそんなこと!?」
リーダー
「先輩たちがみんな〇〇組だって言ってたので…」
社長
「誰にも教えてねえよ!勝手な想像の話だろ」
コトの顛末は社長は従業員のだれにも教えず、毎月、◇◇組にみかじめ料=ケツモチ料を支払い続けていたのでした。現場のリーダーですらケツモチがどこの組織なのか聞かされていませんでした。先輩との立ち話で「ああ、うちは〇〇組がケツモチらしいよ」と聞いていましたが、全くの事実誤認でした。末端の客引きはヤクザとの付き合いは全くなく、自分のグループの背後にいる組織も知らなかったのです。
◆すべては「上の者」が1人で◆
キャッチグループは階層的な組織を持っています。
金主(出資者・実質的オーナー)
社長(実務的責任者 契約会社との交渉など)
幹部(契約秋者からのバックの受け取りなど)
エリアリーダー(歌舞伎町・池袋など地域長)
現場リーダー(数人のチームのリーダー)
末端(路上で声をかけてくるお兄さんたち)
現在、法律でヤクザにみかじめ料を支払うことは禁止されています。「Aグループは〇〇組に毎月@万円払っているらしい」などということが警察に見つかると、ヤクザもキャッチグループも警察の摘発を受けます。ヤンチャな現場の兄ちゃんが「ウチは〇〇組がついてるからよ!」なんて口走ると、すぐに警察が駆けつけて追及され、ヤクザからも叱られます。
こうし事態が起きないようにヤクザとの交渉はオーナー、もしくは社長がすべて1人でやっています。キャバクラやパチンコ店なども同じスタイルが多く、従業員は本当に店とヤクザのつながりを知りません。
この一件はキャッチ仲間の間で瞬く間に広がり、
「知らない方がいいことがある」としみじみ語っていました。