「1億円をドロボーしたのに、
1年で全部シャブに使い果たした」
覚醒剤など違法薬物、ドラッグをやる人の多くは「誰にも迷惑をかけないよ。自分で勝手にやっていることだから放っておいてくれ」と主張します。しかし、これだけハイペースで消費する高額な嗜好商品を買い続けるには莫大な資金が必要になってきます。
しかし、薬物を常用している人はまともに仕事ができないので。手っ取り早く盗みを中心とした犯罪で薬物の代金を稼ごうとします。結果、世の中に多大な迷惑をかけることになります。
ラリッて刃物を振り回す??
この話題になると反対意見として連想されるのは「ラリッて刃物を振り回す」とか「ワケが分からなくなって車を暴走させる」とか「ハダカでピストルを撃ちまくる」というような「頭がおかしくなって人に危害を加えるから危ない」ので社会に迷惑をかけるというストーリーです。
しかし、覚せい剤や薬物をやると、大体の人は行動を起こさなくなります。もっと簡単に言えばやる気がなくなる人が多いです。人を切りつけたとか拳銃を撃ちまくったという人は意外と少ないものです。
覚醒剤を使用し続けると強烈な被害妄想・幻覚・幻聴が出ます。電車の中で全く見ず知らずの人たちが楽しく話しているのを見ても、「警察に違いない」とか、家の近くを散歩している人を見ると「あれはヒットマンが自分を監視しているんだ」とか、ちょっと携帯の電波が悪いと「アメリカ政府に盗聴されている」などと騒ぎ始めます。
私がこれまでに見てきた感覚では刃物をはじめとする武器を持ち歩いていても、積極的に誰かを襲ってやろうというよりは妄想や空想によって自分は誰かに狙われている、襲われると錯覚して防御のため、護身用に刃物や催涙スプレー、警棒などを持って武装している人が多かったような気がします。
結果、当人は包丁を持って警戒している臆病な小心者だとしても、周りの人から見れば「包丁を持って血走った目をした人がうろついている」ようにしか見えません。誰かが警察に通報して、警察がたくさん集まってきて「刃物を捨てなさい」となります。警察が取り押さえようと近づいてくると「うわー襲われる―」と刃物を振り回す展開になります。
新聞記事には「刃物を振り回していた男を逮捕。覚せい剤使用の疑い」という見出しになってしまいます。
お金が湯水のようにかかり泥棒に
ドラッグは消費型の「消えモノ」嗜好品の一つですが、食事やタバコ、お酒に比べると話にならないくらい高価で、ハイペースで使い続けなければなりません。1億円あっても数年しか持たないという話をする人もいました。
使用者の多くは体調不良で正常な生活ができず、まともな仕事を続けることができません。つまり、
まともに働かないで大金を手にする。
必要が出てきます。
親からの資産を受け継いだ人やよほどアイデアがあって株式投資やFX、など実働が少なめの仕事で大きな利益を得ることができる人ならば別ですが、ほとんどの人は犯罪でお金を得て、ドラッグに消費していくことになります。
詐欺や恐喝などの時間と手間がかかる商売は向いていません。
「とにかく今、クスリのカネが要る」という人たちなのですから。そういう犯罪の中で一番手っ取り早く、大金を手にすることができるのは窃盗や強盗などの「盗み」です。
売人から「上ポン=上等なポン中」にしたてあげられると、「クスリのためだけにカネを集めて生きている」というような廃人になってしまいます。本当にクスリを分解するためだけで、なんのために生きているのかわからなくなるそうです。
「シャブ中はドロボーの始まり」
あるベテランの刑事さんが
「シャブ中はドロボーの始まり」と言いました。
実は、いま全国の警察は刑事部の窃盗(3課)や強盗(1課)の担当部署と生活安全部の薬物取り締まり担当部署、さらに組織犯罪対策部(旧マル暴)の暴力団取り締まり担当と3つの部が緊密に連携してワーキンググループのようなものを作って情報を交換しながら捜査をしています。
自動車盗、空き巣、強盗などの単純な経済的利益を得ようとする犯罪のかなりの部分が薬物常習者による事件で、暴力団との接点も強いからです。
「自分で好きにやってるんだから放っておいてくれ」と主張していた常用者がいましたが、結局クスリのカネ欲しさに車上荒らしや高級自動車の窃盗を繰り返し、警察に逮捕されました。最後、警察に逮捕されまいと車で逃げたときは時速100キロ近くで市街地を信号無視して走り回り、何台もの車に当て逃げをして、たくさんの人にけがをさせました。まったくもって「自分の勝手」では済んでいなく、無関係の人たちに多大な迷惑をかけていました。
一生ドラッグ費用を賄えて、家から一歩も出ないという大金持ちのお坊ちゃんお嬢ちゃんなら勝手にラリってのたれ死ぬのは自由かもしれませんが、そんな人はほとんどおらず、結局、ドロボー人生で社会に迷惑をかけ続けていくことになります。