◆映画「アウトレイジ」に突っ込み◆

「アウトレイジ」「アウトレイジビヨンド」はヤクザ映画としては久しぶりの大ヒットでサラリーマンやOL、学生、主婦まで幅広い人が見られた映画だと思います。派手な抗争事件、銃撃戦、ヤクザが莫大なカネや権力を持っているように描かれるのは演出上仕方ないかもしれませんが、ディティールの荒さというかシンプルに取材・知識不足が気になり暇つぶしに突っ込んでみます。



・「死刑」覚悟の身代わり自首
警察官と女性が殺された事件。チンピラは「組のためにちょっと刑務所に入る」みたいな感じで身代わり自首し、警察の誘導通りに供述します。暴力団が2人も人を殺したら死刑ですが、そういう基本的な知識が制作側にないからああいうストーリー展開、演技になったんだと思います。

・警察が刑期を短くする
北野武の刑期が突然短くなり、出所します。暴力団の捜査、弱体化に北野武が必要だと考えた刑事が出所を早まらせ、北野武は刑事に「お前動いたな」と言います。単純に法規上あり得ない。

・キャリア官僚?
大臣のスキャンダルの陰で死亡する国交省のキャリ官僚。警察も政権に気を使って自殺で処理します(ありえない)が、利権の根回し、ヤクザとの交渉など、どうみても政治家の「秘書」の仕事で、純粋に制作側が秘書と官僚の仕事を間違えています。

この映画では大抗争事件が何度も起きて大勢のヤクザが死にます。しかも山や海でなく、比較的都心で事件は起きますが防犯カメラや目撃者もなきがごとし。死体は街中やビルに平然と残され、警察がまともに捜査をすることはありません。三浦友和演じる組長に至っては現場までわざわざ車で乗り付け子分に手榴弾を直に手渡して爆破・殺人の指示まで下します。逆に殺されるのも白昼のパチンコ屋です。まるで彼ら以外に通りすがりの人たちや組織としての警察、マスコミなどいないがごとしで物語が流れていきます。これが一番の違和感の原因かもしれません。

これまでの北野映画でもそういった傾向はありましたが、かなり情緒的というか少し浮世離れした空気感があったので気になりませんでしたが、アウトレイジはすごく気になります。