「いきなり捕まったら何年も
まともなメシが食えない生活が続くんで
毎日きょう食っとかないとっていう気分です」
-出所したばかりの若手組員
ヤクザと食事に行くと
「大トロ10コ!ウニ10コ!」
「特上カルビ10人前!」
「この店で一番ええ酒もってこい!」
こんな台詞をよく聞きます。自分を大きく見せたい、豪快にもてなしたいというヤクザ独特の気持ちがあるのは間違いないです。しかし、たびたび一緒にいると、1人の食事や仲間内だけでの食事でも食に対するこだわりが並外れて強いことに気づきます。
なぜかと問えばやはりヤクザは突然、司直に身柄を拘束されて社会不在になり、好きなものが食べられなくなってしまうからだそうです。
◆突然「国の食事」になる◆
映画「刑務所の中」より
https://www.cinematoday.jp/movie/T0001212
ヤクザは本当にいきなり警察に逮捕されます。
近年、暴力団が逮捕拘留された場合、ほとんど保釈が認められません。逮捕→警察の留置所 起訴→拘置所 有罪判決(実刑)→刑務所に入ります。
「逮捕する!」と手錠を掛けられてから何年も社会から隔離されその間ずっと「国の食事」を食べ続けます(留置場だけ出前や弁当がとれますが、警察署の契約業者で特別においしくはないです)。紹介した映画「刑務所の中」では刑務所の食事がかなり忠実に再現され、「映画館を出たら無性に麦飯とみそ汁を食いたくなった」なんて人が大量発生し、「飯テロ映画」とまで呼ばれました。しかし、映画の中ではたまに出るコーラやチョコレートががたまらなくおいしかったり、お正月に出る袋菓子が楽しみだったりといかにシャバにいれば当たり前に食べられるものが食べられないかが伝わってきます。また、法務省のアピールのおかげで「刑務所の食事は結構おいしい」という風評が広まっていますが、「国の食事」はやや改善されたとはいえ、シャバの食べ物とは比べものになりません。また、元服役囚が雑誌やテレビで「府中刑務所のカレーは絶品だった」とか「網走刑務所の麦飯はうまかった」などと話しますが、実際に服役していた人たちに話を聞くと「それはほかの毎日の食事がひどすぎただけで、そんなにおいしいものじゃねえよ。毎日が薄味のおかずとすまし汁なんだから、たまのカレ―がは体に染みるよ」。
違法なあぶく銭で高級料理や酒を飲みまくって肥えた舌には刑務所の麦飯はなんとも物足りないものでしょう。
本当に何年もの間、「一度も」まともな食事が食べられません。お菓子などはたまに口にできますが、本当においしい食事はできません。
組員によると、刑務所を出ると数日間は失った歳月を取り戻すように暴飲暴食すると言います。そしてあっという間に粗食ができないクセが戻り、刑務所でやせた体がすぐに膨らんでしまうそうです。
とはいえヤクザも最近は健康ブームと、そもそも経済的なひっ迫で昔のような無用の大食いはやめている人が多いそうですが。