🎍ヤクザのミカジメ🎍


「払わないキャバクラには逆に徹底的に通って
 毎晩ドンチャン騒ぎしてやりましたよ。
 俺たち以外誰も来なくなって泣きが入りました」

 -若手組員B

「毎月3日シメで払うから」
「3日に払わないとシメられる」

そんな恐ろしいみかじめ料ですが、現代、店で客が暴れたとかツケを払わないとかのトラブルにヤクザを使う店はまずありません。ヤクザに頼んだら先方に警察に駆け込まれ、分が悪くなるだけです。そうなるとみかじめ料=用心棒代はいったい何のために払うのかとなってきますが、その実態はこんな感じのようです。

◆完全違法店のミカジメ◆

ヤクザのミカジメの大部分は、完全な違法業種です。ヤミ金・薬物の売人・カジノ・裏DVD店などは間違いなくヤクザにみかじめ料を支払います。何年か前まではヤクザが直営していた業界で、今も限りなく直営に近いですが、本当に組員が店番をしているような直営型は警察に摘発されたときに団体そのものや親分まで逮捕されてしまうので、最近は意外と明確に外注して、みかじめ料(とはいえ店によっては売り上げのほとんどなので実質は直営なんですが)を徴収する方式を取っています。もしこうした違法店でみかじめを拒否するところがあれば、それはヤクザをナメている、ケンカを売ったことになるので、店をメチャクチャに壊しにきたり、拉致されてリンチを受けたり、売上金を強奪されたりします。違法行為をしている身の上、よほどのことがない限り、警察に駆け込めない人たちなので泣き寝入りしかありません。

とはいえ、そもそもこういう業界はヤクザか、その周辺者しか手を出さない≒ほぼヤクザが経営なので支払わないという人もほぼいません。

◆女性の接客サービスがある店のミカジメ◆

「夜のお店」もほぼ間違いなく支払っています。女性が接客するお店は伝統的にヤクザの関わる領分とされていて、そういう商売をするなら本職にスジを通せよというわけです。こういう店がみかじめ料を払う基本的な理由は、ヤクザに客できてほしくない、嫌がらせをしてほしくないからです。昔は店のトラブル解決などもしていましたが、今では逆に「店でトラブルを起こさないでもらう」ために支払っています。店に来て居座られるだけでほかのお客さんが来なくなるし、従業員も怖がるしで十分迷惑になるのです。
直接的なサービスをする「真夜中のお店」も嫌がらせを回避するために支払っています。こちらの業界もそもそも真っ新な素人が手を出す業界でないのであまり払う払わないでモメることはありません。女性のサービスのあるお店の特徴は月々いくらでなく「売り上げの何割」という取り決めが多い気がします。それも銀座や歌舞伎町という土地柄やオーナーとヤクザの関わり合いの深さにもよるようですが。


◆払わなかった店◆
何年か前に歌舞伎町でみかじめ料の支払いを拒否したキャバクラ店がありましたが、開店初日からヤクザの集団に通われました。

普通のサラリーマンの横でヤクザ丸出しの集団が「アニキ」だの「カシラ」だの大声で騒ぎ、兄貴分が突然、「テメエなめてんのか!」なんて店中に響く大音声で若い衆を恫喝すれば、ほかのお客さんはそそくさとお会計を頼んでしまいます。さらに「酒のつぎ方が悪い」だ、「おしぼりがぬるい」だと、店の女性や黒服へすぐに言いがかりをつけていじめるので(萎縮させる程度で手出しはしない)、従業員がみんな「辞めたい」と申し出て、あっという間にオーナーが折れ、みかじめ料を払っていました。本当は警察にちゃんと届ければ”中止命令”など出してくれて払わないですむのですが、その手間と、これからもたびたび続くであろう嫌がらせや悪評を考えると、「月々何万円程度でしんどい思いをしないですむならいいや」との結論になってしまったようです。

まさに、こうしたスキマに入り込むのがヤクザです。

◆居酒屋・ラーメン・定植屋・・・普通の飲食店は?◆

フランチャイズの居酒屋やファミレスは支払いません(本社がつきあいがある会社はかなりありますが)。個人の店となると、地域性で分かれるところです。

出店したら当たり前のように「〇〇一家だけど?」と花を持って店に押しかけ、お店も「ハイハイ。聞いてますよ」なんて調子のところもあれば、地場のヤクザが一般飲食店からは徴収しない地域では、何十年も飲食店をやっていてもヤクザなんてきたことないということもあります。
東京、大阪、名古屋、福岡あたりの大都市の賑やかな繁華街では飲食店にもみかじめ料を迫る文化があります。歌舞伎町では開店すると「払ってくれよ」と迫りますが、断られたらいったん下がります。しかし、その後もチクチク来られたり、店に嫌がらせ的に居座られたりします。こうした文化の結果、一番多くなっているのは、「年末だけ付き合う」だそうです。干支の置物や門松の押し売りだけ付き合うというお店が多く、いずれも数万円程度だし、まあ実際干支の置物や飾りももらえるので「まあ仕方ないか」という感覚だそうです。

◆店同士の徴収にさせる◆ヤクザが直接店に来ると恐喝や条例違反になるので代わりに地元の老舗の店のオーナーがまとめて徴収するケースも多いもようです。このシステムだと素人が素人に払うことになります。顔見知りの定食屋のオヤジさんが喫茶のママから徴収みたいなことになるので、ヤクザは直接行かないで済み、恐喝や条例違反になりません。また、断ると「えー、払ってくれよ!オレ怒られちゃうよお」なんて仲良しの人にいわれちゃうのでヤクザに断るよりよほど断りづらく、ついつい払ってしまうのだそうです。

◆ミカジメに付き合うメリットもある◆

とはいえヤクザも内心は、「なにもしてないのにカネだけむしってカッコ悪いな」という気持ちはあるらしく、特に女性が切り盛りするお店だと、何もしないのに毎月タカリみたいに金を徴収するのはバツが悪くなってきます。そこで何かの会合をその店で開いたり、知り合いを客として紹介したりとフォローは入れていて、お店のママに「いいお客さん紹介してくれてありがとうね」なんて言われるのが理想です。ひょっとしたらみかじめよりヤクザやその仲間が使ってくれたお金の方が多いんじゃないか?なんてお店もあって、そうなってくると明確に付き合うメリットがあります。たくましいママさんはみかじめ料の何倍も飲ませて逆にヤクザから金を巻き上げています。

しかし、私の知る歌舞伎町の店はそれに全乗りしてしまった結果、最初は金遣いのいいヤクザがちょくちょく顔を見せて繁盛しましたが、「ヤクザ専用店」になってしまい、普通の客がほぼゼロとなってつぶれました。来られすぎてもだめなようです。

◆税金・公共料金理論はいいがかりだが◆

ほとんどの店がみかじめ料を払っている地域で、いくつかの店だけみかじめ料を取れない場合、それはメンツに関わる問題とみて、なんとか回収しようとしてきます。
そこでヤクザが持ち出すのが「ほかの店には払っているから払ってもらわないと不公平になる」という理論です。まるで税務署や公共料金の徴収のような口調で「払わないのはあんたのとこだけだ」とか「不平等になるので払ってくれ」とか、メチャクチャな理論を展開してきます。税金も公共料金もそれにみあうサービスを提供するから払うのであって、何もしない団体に月々の支払いをするいわれは全くありません。何年も払っている店が断るのは至難の業なのをいいことに、そういう店との比較を持ち出してくるのです。そしてそういうヤクザの理論を後押ししてしまうのがこれまでに払ってきた店です。老舗の店のママがヤクザに背中を押されて「この界隈で払ってないのはあんたの店だけだよ」なんてプレッシャーを掛けてくるのです。そういう話は地域で広がり、まるで町内会費を払わない人みたいな扱いを受けて、渋々払うことになってしまうのです。

本来は全ての店がNOと言えばいいのですが、そうもいえない集団の心の弱さにつけ込んでいるのです。