弁護士も知らない!職質職務質問対応
なぜそこまで必死?先輩・上司の目

「ちょっとお時間いいですか」

警察官からの突然のナンパ。

職務質問=職質=ショクシツ。

お問い合わせがあり、書かせていただきます。

たいていは夜に行われ、こん「ばん」はと声を「かけ」ることから業界では「バンカケ」とも呼ばれます。暴力団ヤクザはよく「さっきそこでバンかけられちゃったよ」などと言います。

突然、大事な時間を奪われて、名前や住所を根掘り葉掘り聞かれ、あまつさえカバンやポケットの中身を見せろとまで言われる職質=職務質問。

問題がなければ「行ってよし」で終わる「警察そんなに偉いんかい」と言いたくなる迷惑行為ともいえる警察の仕事。

歌舞伎町では毎日、警察に取り込まれた人が「任意だろ」「令状持ってこい」と叫んでいますが、しばらくするとパトカーに押し込まれてどこかに連れていかれます。



この記事では一番気になる「どうしてそこまで必死なのか」についてです。

全然帰してくれない理由

職質を一度でも経験したことがある人なら、「ちょっといいですか」「すぐ終わりますから」丁寧な口調とは裏腹に実際は「答えるまで帰さない」姿勢で臨んでくることはわかるはずです。

急いでいる、時間がない、どんな言い訳をしても是が非でも話を聞き出そうとしてきます。

警察は職質をかけたら最後、相手から話を聞けない、素性を聞き出せずにリリースしてしまうなどということは職業柄敗北です。本当に犯罪者を見つけてやろうという気概もあると思いますが、警察官としてのプライドがしめる部分も大きいと思います。

目の前で人事査定されるつらさ

もっと実務的な問題として先輩や上司、相棒の目があります。普通、職務質問は(というか警察の捜査すべて)2人1組、ないしはそれより大人数で行います。

そして声をかけるのはだいたい後輩、若手です。先輩が隣に立ってその「職質スキル」をじっと見ています。間近で上司に仕事ぶりを見られているわけです。営業マンでいえば外回りをずっと上司が見ている状態です。

そこで、「先輩、論破されたんで、このまま行っていただきます」なんてことになれば評価に大きなバッテンを食らってしまいます。また、あまりにらちが明かなくて「もういい、俺が話す」となることも後輩にとってはあってはいけないことです。

また、こうした活動は報告書日誌に書かなくてはいけないので「職質したけど、任意だろと断られたので、それはそーなんでそのまま行かせました」などと記録すれば、警察署中の笑いものになります。

警察官は職質をかけた時点で「絶対に負けられない戦い」が始まっているのです。なんで対応しなきゃいけないんだと嫌な気持ちになるかもしれませんが、そこは警察官の奥にある上司や先輩への怯えなんかを読み取って、

「まあお巡りさんも色々大変なんだね」と思ってやさしく素直に応じてあげるのがお互いにとっていいような気がします。

 

新人の研修材料にされているかも

新人、若手の場合は、職務質問が日常業務の中心を占めるとともに、これから長い警察人生でどこの部署に行っても絶対に必要な「対人コミュニケーションスキル」を磨く練習にもなります。

職務質問は「いきなり見ず知らずの人に話しかけて素早く情報聞き出す」という訓練の意味も兼ねています。なので先輩が急に、「おい、おまえアイツにバンカケしてこい」なんて指示を出すことがあります。

本当に怪しい人物でなくても、とりあえずバンカケしてみようということです。

結果、一流企業のサラリーマンで全く犯罪と無関係だったとします。「失礼じゃないですか」「時間がないんです」「あなた、何の権限があるんですか」。

いつも「何じゃこらポリ公」とつっかかかってくるチンピラ相手には上手に対応できていた若手も理路整然と非難してくる人に遭遇することで、「このタイプの人はどうしよう」と考えるわけです。

いつものチンピラ相手と同じ調子で「やかましいんじゃコラ」では心を開いてくれません。平身低頭したり、「いや、実は最近ここらへんが治安が悪くてですね」などと妙な言い訳をして笑ったりしながら相手の懐に入ろうと努力します。

こうした経験を通じて、将来、似たような性質の犯罪者の取り調べや、目撃者の事情聴取に役立てることができます。多様な人に出会うことで、広い意味での対人スキルを磨くというのは警察官の仕事が人と付き合うことを基本としている以上、とても大切なことです。

もしあなたが全く普通の風貌でテクテクと歩いているだけにもかかわらず、職質をかけられたらこうした新人研修、若手育成に巻き込まれたのかもしれません。