「ちょっとお時間いいですか」
警察官からの突然のナンパ。
職務質問=職質=ショクシツ。
お問い合わせがあり、書かせていただきます。
たいていは夜に行われ、こん「ばん」はと声を「かけ」ることから業界では「バンカケ」とも呼ばれます。暴力団ヤクザはよく「さっきそこでバンかけられちゃったよ」などと言います。
突然、大事な時間を奪われて、名前や住所を根掘り葉掘り聞かれ、あまつさえカバンやポケットの中身を見せろとまで言われる職質=職務質問。
問題がなければ「行ってよし」で終わる「警察そんなに偉いんかい」と言いたくなる迷惑行為ともいえる警察の仕事。
歌舞伎町では毎日、警察に取り込まれた人が「任意だろ」「令状持ってこい」と叫んでいます。
この記事では気になる警察官の皆様の「狙い」についてです。
職質で犯罪者を見つけて検挙することを「職質金星」と呼びます。薬物の使用で逮捕された有名な芸能人や、指名手配犯なども実はこの「職質金星」だったりします。
警察が必死に職質をする狙いについてわかれば、「あーそういうことなんですね」と少し暖かくおおらかな気持ちになるのではないでしょうか。
職質で詐欺や汚職事件を挙げられない
職質をかけた相手が実は最近話題の「地面師」だったり、政治家や官僚に賄賂を送っているフィクサーだったり、被害額が100億円を越える大物詐欺師だったとしても職質ではそんな事件にまで話は伸びません。その場の持ち物などでで犯罪性がわかる程度の事件しかできません。
職質はおおまかに以下の4つのために行われています。
なんといっても薬物と泥棒とヤクザ
別の記事でも書きましたが、世の中にはシャブ中とそれに付随する泥棒、日々是犯罪のヤクザが街を徘徊しています。
職質でお決まりの
「ポケット中身出してください」
「車の中見せてください」
「危ないもん持ってないですよね」
は基本的にはこういう連中を見つけるための文言です。
ポケットの中に元気なパケ入りの粉があったり、車のトランクにバールと軍手や時計や貴金属がが入っていたり、ダッシュボードからピストルが出たりしたら「金星」となるわけです。
また、その場で薬物を所持していなくても尿検査で使用がわかる場合もあります。
職質は基本的にはその場で犯罪性のあるものを所持しているとか、ヤッている場合ではないと検挙につなげることはできません。
発生モノの検挙
例えばひったくり事件が起きた直後、警察無線には逃げた犯人の特徴が流され、場合によっては緊急配備がかけられます。
「被疑者は黒い上下でバイクで逃走」との情報。ちょうど交差点から黒い服にバイクの男が近づいてきます。
こんな時、犯人かもしれないと警察官は職質をかけます。
ただ、この時も「さっき近くでバイクのひったくりがありまして」とは切り出さず、いつも通り「ちょっとお時間いいですか」と聞いて相手の反応をみます。
相手の服装やバイクの特徴があまりに一致していて、冷や汗をかいたり、暴れたり、ズバリ犯人ではないかと思ってもそこで逮捕するわけにはいきません。
あくまで任意の職務質問の中で、その場で押しとどめて、話を聞きながら応援を呼びます。
本当に犯人だった場合は職質警察官による大手柄ですが、うまくいくことは少なく、蕎麦屋の出前のお兄さんかもしれません。
とにかく声をかけてみないと始まらないので、こうした事件があるとそこら中でバイクに乗った人が職質をかけられることになります。本当の犯人だったら、職務質問を振り切って逃げようとするでしょうね。
よう撃(待ち伏せ)のため
「先ほど発生」ではないにしろ「最近発生」の事件の犯人も職質で見つけられる可能性があります。
犯行時間や出没場所にパターンがある場合は犯人を「よう撃」(迎え撃ち)するために、周辺地域で待ち構えて、通りがかる人をバッタバタとバンカケします。
単発の事件の犯人を探すのはなかなかハードですが、放火、空き巣、わいせつ行為、ひったくりなど連続性があり、「またやる」可能性がある事件では職質は犯人検挙の有効な手段です。
たとえば夜中に自転車でウロウロしている少年がいて、職質をかけてカバンを調べたらライターとジッポオイルが出てきた―最近の連続放火はお前だったのかなんて解決したりするかもしれません。
トレンチコートの下が素っ裸のおじさんを見つけることができるかもしれません。
指名手配犯・家出人の検挙相当な大成功例ですが、指名手配犯を発見することもあります。
指名手配犯は、警察署や交番にポスターが貼ってあったり、テレビや新聞で報道されている人たち=公開手配のスター指名手配ばかりではありません。
ちょっとした窃盗や覚せい剤事件、オレオレ詐欺などの犯人で全国警察のネットワークの中で「社内向け」に非公開で指名手配されている人たちも多くいます。
東京でヨレヨレの格好をしている不審な男を職質したら、北海道警が指名手配している泥棒だったなんていうことは割とあることです。こんな場合は署長から表彰されるでしょう。
また、行方が分からなくなって家族から捜索願が出されていた家出人の少年や少女(大人もですが)が保護されることもあります。