犯罪者の素顔 子どものころからワルだった人々 性格異常 反社会 非社会 パーソナリティ障害 家庭環境

少年犯罪や犯罪者の少年期の非行について報道されるとき、家庭環境や貧困、過去のいじめ体験や虐待などの不幸な生い立ちが注目されがちですが、実際には生まれながらの性格=器質的なものも大きく影響している人も多いです。

 

取材現場で聞く犯人の生い立ち

 

事件が発生すると容疑者の過去について取材を進めることが多くあります。

「地取り」取材といって育った地域で家族や友人、近所の人を探して容疑者の人となりを追いかけます。卒業アルバムやSNSの写真なども入手します。

 

テレビや新聞で「おとなしそうな人だった」「驚いている」という報道が多い印象があるかもしれませんが、実際はそうでもないことも多いです。

「前からおかしいと思っていた」「いつか何かをしでかすと思っていた」という声のなんと多いことか。

マスコミはあまりにあからさまに事件の容疑者を攻撃、批判するような証言を得るとしばしばそれを掲載せずに、もっとなじみやすい証言を選ぶことがあります。

忖度というより、「元からやばい奴だったから、仕方ない?それを言っちゃあおしまいでしょ」という考えによるところが大きいです。

そういわれてしまうと、社会性というか汎用性のない話になってしまい、記事を書こうとすると手が止まってしまいます。

 

 

実際の取材現場では…

凄惨な殺人事件や通り魔、悪質な窃盗・性犯罪事件などややズバ抜けて凶悪な事件の取材をしていると小学生や中学生のころから問題が多かった、暴力やトラブルに彩られた子供時代を過ごしていたという事実に遭遇します。

 

極端な例でいけば、幼いころから「人を殺す」と口走ったり、実際に過剰な暴力をふるったことがあったり、常習的に盗みを繰り返すなどしていたケースです。

周囲からも幼いころから、危ない子・変わった子と認識されているという人も多いです。

 

これまで何度か昔の同級生たちを取材していて

「あいつならいつか人を殺すと思っていた」

「やっぱり人を殺しましたか、驚きません」

ということを言われることがありました。

 

そのたびにこの犯人をだれも止めることはできなかったのか、事件は防げたのではないかと思っています。

 

報じないマスコミ
マスコミはこうした実態を知りながら報じていません。
正確には、事実関係として同級生や友人の証言を報じることはあったとしても、そこを深堀して取材するということはほとんどありません。

そこを取材していくと遺伝とか障害の問題に突き当たるからです。
生まれながらにして犯罪者であるとかDNAに問題があると言うような議論になってしまって 差別を助長する恐れがあるからです。

取材を続けていると本来は医療機関で精神的な病気、病理的な性格などの診断を受けてちゃんとした治療、矯正が施されなければならなかったのに、放っておかれた子供がいます。

ここで少し補足しておかなければならないのは、こうした人たちは必ずしも、明確な精神障害や、ADHD、自閉症、アスペルガー症候群のような比較的わかりやすい疾患ではないことも多いということです。

精神病質、社会病質、あるいは非社会性・反社会性パーソナリティ障害がかなり近い印象です。

 

パーソナリティ障害?

世界的に有名な製薬会社
Merck & Co.=メルク・アンド・カンパニー
日本法人のMSD製薬=MSD株式会社 (MSD K.K.) がオンラインで提供している

MSD マニュアルより引用させていただきます。(一部省略している部分があります)

https://www.msdmanuals.com/ja-jp/

反社会性パーソナリティ障害
反社会性パーソナリティ障害患者は,個人的利益や快楽のために違法行為,欺瞞行為,搾取的行為,無謀な行為を行い,良心の呵責を感じない;

病因
遺伝因子および環境因子(例,小児期の虐待)が反社会性パーソナリティ障害の発生に寄与している。

考えられる機序は,異常なセロトニントランスポーター機能と関連する衝動的攻撃性である。幼児期に他者の痛みを無視することが青年期後期の反社会的行動と関連づけられている。

反社会性パーソナリティ障害は,この障害を有する患者の第1度親族において,一般集団よりも高い頻度でみられる。

この障害を発症するリスクは,この障害を有する親の養子および実子のいずれでも高い。

注意欠如・多動症を伴う素行症を10歳以前に発症した場合,成人期に反社会性パーソナリティ障害を発症するリスクは増加する。

素行症が反社会性パーソナリティ障害へと進展するリスクは,親が子供を虐待したり,ネグレクトしたりする場合,またはしつけもしくは子育てに一貫性がない場合(例,温かく支持的なものから,冷たく批判的なものへの変化)は増加する場合がある。

 

症状と徴候
反社会性パーソナリティ障害患者は,器物の破壊,他者への嫌がらせ,窃盗により他者や法律の軽視を示すことがある。

彼らは自分の欲しいもの(例,金,権力,セックス)を手に入れるために,人を欺き,利用し,言いくるめ,操作することがある。患者は偽名を使うことがある。

このような患者は衝動的であり,前もって計画を立てることがなく,自己もしくは他者に対する行動の結果または自己もしくは他者の安全性を顧慮しない。

その結果,患者は突然転職したり,引っ越したり,人間関係を変えたりする。運転中にスピードを出したり,酩酊中に運転したりして,ときに事故につながることがある。

過剰な量のアルコールを摂取したり,有害作用が生じうる違法薬物を使用したりする。

 

反社会性パーソナリティ障害患者は社会的,金銭的に無責任である。別の仕事に就く計画もなく,仕事を辞めることがある。

機会があっても職を求めないことがある。請求書の支払いをしなかったり,ローン返済を怠ったり,子供の養育費を支払わなかったりする。

 

このような患者はしばしばすぐに怒り,身体的攻撃性を示す;配偶者やパートナーと喧嘩を始めたり,虐待したりする。

性的関係では,患者は無責任で,パートナーを利用し,パートナーを1人だけに留めることができない場合がある。

 

行動に対する後悔の念がない。反社会性パーソナリティ障害患者は自分が傷つけた相手や(例,傷つけられて当然である)世の中のあり方(例,不公平である)を責めることで自分の行動を合理化することがある。彼らは人のいいなりになるまいとし,いかなる犠牲を払っても自分にとって最善と考えることをしようとする。

このような患者は他者に対する共感に欠け,他者の感情,権利,および苦しみを馬鹿にしたり,それらに無関心であったりする。

反社会性パーソナリティ障害患者は自己評価が高い傾向があり,非常に独断的,自信家,または傲慢なことがある。望むものを手に入れるためには,感じよく,能弁で,流暢に話すことがある。

 

https://www.msdmanuals.com/ja-jp/より引用
反社会性パーソナリティ障害(ASPD) –
08. 精神障害 – MSDマニュアル プロフェッショナル版

本来、専門の医療機関にかかわっていれば、こうした特性がわかり、早い段階で対応ができたかもしれません。

周囲の教師や親、友達から漠然と「いうことを聞かない子」とか「悪い子」としか認識されていなかったような気がします。

そして大人になり、モンスターになって人を傷つけたのをみて、

「ほら、やっぱりやった」

それでいいわけがありません。

 

 

 

Aちゃん


私自身、苦い記憶があります。

小学4年生くらいのとき、学校は違うけれど、近所に住んでいる問題のある女の子、Aちゃんがいました。

Aちゃんは人のものを盗んだり、平気でウソをついたりする子でした。友達や先生にとがめられると開き直って殴りかかってきました。

当時は子供だったので「いやな奴だ」くらいの印象しかありませんでした。

大人になって考えてみると、まだきちんと物心がついているとも言えない年で、あそこまで反社会的、非倫理的な子どもは何かどうしようもない、やや先天的な問題があったのではないか。

 

ふと気になってインターネットでAちゃんの名前を検索しました。FaceBookやTwitterでも見つかるかなと思っていた私は、愕然としました。

 

インターネットの2ちゃんねるの「鑑別所」「少年院」「女子刑務所」の有名人について語り合うスレッドばかりが出てきたのです。

 

読み進めてみると、どうやら彼女は中学生くらいからずっと鑑別所や少年院を出たり入ったりして、成人してからは刑務所を出たり入ったりしているようでした。

スレッドに書き込まれている内容を読みました。

「それにしてもアイツはワルばかりの中でも頭抜けたワルだった」という内容ばかり。

「Aに仕返ししないと気がすまない。出所した後どこにいるか知りませんか」という書き込みもありました。

 

少年院や刑務所でも突出して素行が悪かったようでした。

 

Aちゃんは今も、刑務所に入ったり犯罪を犯したりしているのかもしれません。

 

 

人は変われる

ここまでくると、生まれながらに問題のあった人は一生、人に迷惑をかけ続け、疎まれ、嫌われながら生きていくしかないような印象を持つかもしれませんが、そうではありません。

医学的な支援や人の支えがあれば社会の中で穏やかに暮らしていくことも可能なのです。

 

最後に、もう一文、MSD マニュアルより引用させていただきます。

https://www.msdをanuals.com/ja-jp/

 

有病率は加齢とともに減少し,患者が時間の経過とともに自分の不適応行動を変化させることを学び,人生を築く努力を払えることを示唆している。